エルフの夢

 人里離れた村落に1人のエルフがいました。


「あなたの夢はなに?」


「この世の全てを解き明かすことだね。」


「そう。」


***


 ある日、大木にもたれかかりながら絵本を読んでいるエルフさんと出会いました。


「なぜ絵本を読んでいるの?」


「面白いからさ。」


「この世の全てを解き明かすのが夢じゃなかったの?」


「そうだよ。だから、今こうして絵本というものを研究しているのさ。いいかい?学問の進歩にしろ、生物の進化にしろ全てのものは一直線上に成長していくわけじゃない。的あての中心を狙うかのように右に左に揺らめきながら中心を目指すんだよ。だから、一度も研究したことの無かった絵本を調べることも決して無駄なことじゃない。まあ、ヒトは私のことを気味が悪いと言うけどね。凡人は妄想し、天才は事実をかき集めるとかつての友が言っていた。彼らの妄想を上回るには私という事実は力不足だったんだろうね。」


「……あなたはそれでいいの?」


「議論のできる相手がいなくなってしまったのは寂しいけど、まあいいよ。何千年と生きてきたが、寂しさが気にならないほどにこの世界は未知の感動に溢れている。もちろん、君もその一つだよ。」


「そう。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る