2章 私の家のこと
私が生まれた国は地球の日本。
本名は佐藤栞。A大のミスコンにも出た。
有名私立に入れるくらいは頭がよかったし、家庭も裕福だ。だが謙虚と自分では言わないが、あまり表立って自分を出さないところがいいところだった。
彼氏がいた経験はない分、いつかのいい親を憧れていたことは覚えている。
だが、記憶はぶっつりと途絶えている。
気づいた時にはファティス王国の王女、お姫様であった。
ファスティス王国はフランスの王国に少しスペインの血が混じったのかなというオーストリアを源流にしたハプスブルグ家のような大陸系の雰囲気を持っている。
どっかの隣国と無敵艦隊なんて呼称したりしてもいないけれど、血の気が多く今も領土拡大中である。
長兄であるドーマはこの間原住民と仲良くなったことで讃えられていた。
こんな大国の周りにある国可哀想まである。
私の住んでる国は影響力が強過ぎて姫がこちらが送るまでもなく、友好国になりたがる国ばかりのため、私がどこかへいく必要はない。
私みたいなどこから現れたかもわからない人間なんて速攻他国送りがいいところだが、身内には優しいお国柄らしい。
「お父様、ミューとルールに甘過ぎやしませんか?」
「おや、普段は殻に閉じ込めて我なんて出さないのにどうしたのだね」
「私の婚約の儀になる度に双子を差し出してますね」
「言い方が悪いなあ」
お父様はブロンドと少し白髪混じりの髪の毛を掻きながら歳を感じさせない覇気のある
強い翡翠の瞳を私に見せる。
「あの双子に私を差し出そうとしてませんか?
10回ですよ。そろそろ私も辟易していますよ」
「馬鹿にしてたわけじゃないが、黙ってるのも限界というやつかな」
「仏の心を10に増やしてただけでも褒められたいですね」
「ホトケ?」
「いいえ、言い間違いです」
「そうだな、よくあることだったか。私もこんなことは言いたくないが、あの双子は吉兆でね。よそのよくわからない娘にやるわけにもいかない。
お前のこともそうだ。アリーシャ。道で拾ったのは次女だが責任をずっと持って育てている」
私が不満げに何が言いたいんです?と言うとくしゃりと笑って、無邪気な少年のような義理の父は私に言う。
「部下というのは信頼関係だ。炙り出しに使わせてもらっていた」
「ドーマ兄様みたいな人のいい人と結婚したいですね。私は」
「ああ、ドーマやカミュは人がいいからな。
うちの家は娘が少ないのが欠点だな。
だからこそお前は神の使えてきた子なんじゃないかとすら思うよ」
「いいですか、ルールやミューの嫁だけはごめんですからね」
「じゃあ、一年だ。ミューとルールの誕生日までに魔法のできないお前が信用できるやつを連れて来い」
「わかりました。連れてきましょう。理想の男を」
私は踵をかえし、自室へと帰っていく。
お父様の暇の時間の暇つぶしでしょう。仕事に買ってやったのだからこれくらいは当然でしょう。
私は明日から外に出るために侍女に庶民らしい服を仕立てさせた。
双子の王子に愛されて〜私に関わらないで〜 梅里遊櫃 @minlinkanli
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