1章 ガキはお呼びじゃないのよ


「ほんとねえ、ガキはお呼びじゃないのよ」

 私は頬杖をつきながらガキ共、双子の王子に言った。

 椅子にどかっと座った私の様はもはや暴君である。

 暴君とは弟たちの方である。


 双子のミューとルールは「だってぇ」と甘えた調子で言う。

 3番目の姉としては、末っ子の二人を見るとイライラする。

「だっても何もないでしょう。あなた達だって来年には成人する身、これから王族としての意識を強く持たないといけないでしょ」

 甘ったれた弟達は二人で見合わせた後にっこりして私に近づいてくる。

 

 私とは違う王家特有のブロンド、翡翠の瞳。

 二人が近づいてくることに意味なんてないだろうが、今は鬱陶しくて顔をしかめる。

「ねえ、アリィ姉様」

「何?」

「僕たちがどうしてこんなことしてる理由わかる?」

 11歳の双子の弟はどうしてこんな表情を覚えてきたのか姉として不安になる。

 責任がほぼない、末の弟として生まれた双子。

 生まれた瞬間をよく覚えている。生まれた時から憎らしいほど丹精な顔つきであった。

 双子は不吉だとよく地球の歴史で昔は言ったものだが、どうやらこの国だと吉兆のようであった。

 そのため双子はすくすくと自意識が過剰になる程育ったし、私の婚約の儀を邪魔するのである。

「わからないけど姉離れできてないのだと思うわ」

「僕たち、12になる頃に成人するわけだけど」

「お父様から言われてるんだ」

 まさか、と思った。

「ねえさまと僕たちどっちかが結婚してもいいよって」

 私は頭を打ったようだった。二人から手が伸びる。髪をすくう。口づけはねちっこく感じた。

 白い肌から私の黒髪が流れ落ち、幻想的にも見せているが、多分目眩を起こしているせいだと思った。

「ふざけたこと言わないで、ガキはお呼びじゃないのよ」

「来年にも僕たちはガキじゃなく成りますよ」

「どちらと結婚しても僕たちは姉様を半分こするって約束にしてるんです」

ーーお父様、この双子の育て方を間違えてますよ。

「一人になりたいわ。下がってくれる?」

「えー!」

「ミュー落ち着いて、姉様も一人の時間が大事なお方だから」

「ルールわかったよ。アリィ姉様、”あんな男達”いらないんですよ」

 そういうと二人は静かに去っていった。私といえば、急な眠気に襲われ父親もとい王様に何か言おうという気は失せてしまうのであった。

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