にわとり
ゆきのつき
にわとり
そう 簡単なことだ
一回 死んでみるといい
ほら
だってあなたはこんなにも苦しんでいるし
こんなにも死について
思いを巡らせているのだから
さあ
この長い箱の中に横たわってみて
3、2、1・・・・
いま頭のなかには
なにが浮かんでいる?
この世界に
あなたみたいに死にたいひとは
どれほどいるのだろうか
生きているのに
「生きている」と感じているひとは
どれくらいいるのだろう
街の中にあるあの養鶏場のにわとりは
走り回ることもできず
50mぐらいの鶏場に何列にもなって
ただただ押し込まれていた
細長いすき間に びっしりと
ただたまごを生むためだけに
いのちを燃やしている
ある朝みたら数匹が死んでいたりして
そうすると
人間がにわとりの首をつかんで
どこかに持って行ってしまう
このしくみを作っているのは
紛れもなく人間たちで
この情景に対して何を感じるのかも
ニンゲンそれぞれみんなちがう
でも時折 おもうんだ
ニンゲンもこのにわとりに
だんだん近づいてきているんじゃないかって
なにも考えずに 毎日えさを食べて
たまごを産んでいる
あそこのにわとりたちの中で
広い草原を走り回りたいと願っているにわとりは
どれほどいるのだろうか
このニンゲンたちのなかで
生産の渦から解放されたいと願っているものは
どれほどいるだろうか
この世界は 気づけば気づくほど
細かなレースの模様に目を凝らせば凝らすほど
苦しくなるようにできている
気付いたものから
傷つき
迷い
怒り
その傷が免疫さえも攻撃するかのように
からだにいやしく入り込んでくる
喫茶店の隣のテーブルで
男女がオムライスを食べている
わたしは水を飲み 目を閉じ
自分が棺に入っていることをイメージする
安らげる場所は
この世界に存在するのだろうか
にわとり ゆきのつき @yukinokodayo
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