あの女に思い知らせてやる!!

縦縞ヨリ

全三種一回五百円カプセルは大きめ

 夫の職場の谷さんに告ぐ。

 私はガチャを回しただけだ、それだけなんだ……!

 

 ショッピングモールでアニメ「ぷぅかわ」のガチャガチャを見つけた。全三種。一回五百円もする。

 高価なガチャだったが、戦闘シーンを見事に再現しており、中でも主役のぷぅちゃんがおもち星人にぐるぐる巻きにされて泣いているシーンを再現したフィギュアは圧巻だった。

 絶対欲しい……!

 なけなしのお小遣いを両替機に流し込む。ジャラジャラと出てきた百円玉を握り締め、祈りを込めてガチャっと回した。

 ……違う。目のヤバいカニに食べられそうなぷぅちゃんも可愛いが、これでは無い。

 更に回す。カプセルを覗き込む。これはカピバラとヌルヌル相撲大会に出た時のぷぅちゃんだ。べしょべしょで可愛い。でも違う。

 両替機に駆け寄り、札を崩す。

 近くの駄菓子屋がにわかにざわつき始めた。お母さん達の「おいやめろ」という視線を感じる。

 知った事か。これが大人と言うものだ。

 回す。目のヤバいカニ。お前じゃねぇんだ!

 ここまでで千五百円の出費。単価が高すぎる。

 引くか?

 いや駄目だ。

 子供の泣き喚く声が聞こえる。今は悔しかろう。いずれ大きくなってここに戻って来い。ラスト一投と決めてぶち込んだ。

 ガチャガチャッゴトッ

「……おもち星人……!」

 カプセルからうっすら透けるぷぅちゃんの「びゃ〜っ!」という泣き顔が最高に可愛い。

 私は満足し、ガチャガチャやりたい! と泣き叫ぶ子供達の前を颯爽と横切り家に帰った。


 私は帰ってきた夫を誘い、戦利品を組み立てた。

 なんて可愛いんだ。ちょっと痛い出費だったが、ぷぅちゃんの愛らしい泣き顔を並べたらどうでも良くなった。

 しかし一個、被りが出た。

「これあげる。会社に持ってってデスクに飾りなよ」

 

 夫は翌日、お菓子を私にくれた。

「谷さんがフィギュアのお礼にって」

 あげちゃったの!?

 内心思ったが口には出さず、チョコレートを見る。多分三百円くらいするやつだ。

「息子さんがぷぅちゃん好きなんだって」

 それから少しして、今度はぷぅちゃんのフィギュアを三個くれた。百均シリーズ第四弾、新商品だ。

「見つけたから一緒に買ってくれたみたい」

 ……気持ちは有難いが子供に使ってくれ!


 そんな訳で私は買って来た梨を紙袋に詰めた。もう礼などさせないぞ。

「いい?『実家から送ってきて食べ切れなくて困ってるんで、良かったら貰ってください』って言うんだよ!『ですからどうかお気遣い無く』って絶対言うんだよ!?」 


終 

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