第43話 シスター母に振り回される
あの後、数時間が経過してリリナさんはお仕事があるため、ギルドに帰っていった。
「また来てくれると嬉しいです」と言ったら、「ぜひ……!」と声色が嬉しそうなものに変化して答えてくれたのを覚えている。
だが、彼女が帰った後もみんなの猛攻を喰らってしまう。
喧嘩は始まるわ、森で迷子になるわ、俺をおもちゃのように扱うわで一日で起きたとは思えないことが今起きている。
これ、下手したらマリーの依頼よりも凄く過激なのでは……?あの人の依頼はお世話ではなかったが……。
「……ふぇ、フェリシアさんの凄みが増してくる」
窓を見ると……もう夕方になっているのか。おかしい、ここまで一日で疲労が溜まっていくはずがない。これでも体力だけは自信があったはずなのに……。
「……少し、寝よう。疲れた……」
俺は、ボロボロのソファに寝転がり、身体を休めるために一眠りするのであった。
◇
……ん。今、何時だ?
身体の疲れは少し取れたが……もしかしてだけど少し寝過ぎたか?
そう思い、俺は起きあがろうとして……瞬間、甘い香りが鼻に入ってくる。
「……ん?」
目を開けるが、天井が半分見えない。いや何かで遮られている……?
「あら、レクスくん。起きたのですね」
「……フェリシアさん?」
そこには、今日出ていったはずのフェリシアさんがいた。あ、なるほど。天井が半分見えなかったのって彼女の胸……なんか考えるのが恥ずかしくなってきた。
「……今日は、随分と帰るのが早かったんですね」
「えぇ。案外早く済ませることが出来ましたから。帰ってみるとレクスくんが寝ていましたから、少し驚きました」
いつも頑張り屋のレクスくんがですよ、と俺の頭を撫でながら言って微笑んでくる。
「……あの、俺もう15ですよ?もう子供扱いするよやめてもらっていいですか?」
「私にとってはさほど変わりません。いつになっても、レクスくんは私の可愛い子なんですから」
少し抗議も込めて言ってみたが、どうやら駄目らしい。うぅ……恥ずかしい……。
「……そういえば、いま何時ですか?もしかして俺、寝過ぎてましたか?」
「そうですね……今が10時ぐらいでしょうか?」
……やっちまった。やっぱり寝過ぎていたかぁ。頭を手に当てながら、起きあがろうとして……むにゅとフェリシアさんの胸に当たってしまう。
「あら、ふふっ。レクスくんのエッチ♪」
「……偶然です。ほんとに」
ふぅ、とため息を吐きながらソファから立ち上がる。
「もしかしてずっと膝枕しててくれてたんですか?すみません、痺れましたよね?」
「いいえ。レクスくんの可愛い寝顔を見ていたらそんなもの大したことありませんから」
「いやいや、その割には足少し震えていますよ」
「……気にしなくてもいいんです」
そんなむすっとしなくたって……彼女にもプライドがあるのか、平然と振る舞っているそうだが、俺が指摘すると頬を膨らませている。
それに今気づいたのだが、凄く静かだ。多分フェリシアさんがみんなを寝かしつけたのだろう。
「まだご飯食べていないんですよね?何か作りますよ」
「あ、いえ……そこまでしてもらわなくても」
「そんな遠慮することないですよ。待っててください。何か材料があるはずですから」
そう言って調理場に向かって魔道具である冷蔵庫の中身を見る。
えっと……あ、野菜と肉が残ってる。なら炒め物でもいいかもなぁ……フェリシアさん、野菜好きだし。
そう思ってると……突如後ろからフェリシアさんが抱きついてきた。
「?フェリシアさん??」
「……レクスくん。あなたは優しく、強く育ってくれましたね……あの二人と同じように」
「な、なんですか急に?やめてくださいよ。少し照れますから」
「……これからも優しい人間に育ってくださいね?あなたが生きていることが、私の何よりの幸せなんですから」
いつもと違う彼女の様子。どこか懇願してるような……少し疑問を抱きながらも答える。
「なら、フェリシアさんも長く生きてください。じゃないと恩返しできませんから」
「もう、私のことはいいって言ってるではありませんか。ですが……ありがとうございます。その気持ち、とても嬉しいです」
すると、いつものフェリシアさんに戻ったのか、俺から離れ、こちらを見て微笑んでいる。
「……じゃあご飯作りますから、フェリシアさんは待っててください」
「嫌です♪」
「えっ?」
「私、レクスくんがご飯作っているのを見てみたいです。なので見学します。いいですよね♪」
「え、えぇ……?まぁいいですけど」
……なんだか、誰かに見られながら作るのは慣れないな。
相変わらずフェリシアさんに振り回されながらも俺はご飯を作っていくのであった。
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ギルドの看板受付嬢であるリリナさんは俺と話したい〜その割には俺にだけ冷たくないですか?〜 近藤玲司 @WTAsho36
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