第37話 消滅、そして過去

◇◇◇

時間停止をしたと同時に、セシリアの肩に触れた。

私たち二人以外、周りの時間は止まる。


「ーー光よ、この空気を浄化せよーー【浄化プリフィケーション】」


時間が再び動き出す。

渦は、だんだん小さくなっていく。


「セシリア…いけるか?」

「え、え…」


随分ときつそうだが、それでも諦めない。


「ーー光よ、すべてを込めて球体を作り出せーー【光球ライトボール】」


セシリアはそれを放つが、思ったところへ行かないーーが。


………また。

ペンダントはまた赤く光って小さい光を生み出し、【光球】を乗せる。

皆見惚れてしまうような光景だ。


そのまま小さくなった渦に、吸力が届く範囲まで乗せた、次の瞬間。


【光球】は吸い込まれーー。




パァァン!!




弾けた。

そして、渦はすべて光の塵となって、ぱあ、と光を放つ。


「…セシリア!!」


それと同じ時に、セシリアは力を使いすぎたのか、倒れてしまったーー。


◇◇◇

セシリアを部屋に移した後。


私はペンダントを外し、眺めていた。

赤い宝石だと思っていたが、違った。これは常日頃身につけているもので、母の形見だ。

母はスザンヌ帝国出身。スザンヌは、魔術の礎が残る。


つまり、これが「魔石」というものだろうか。


実際目にしたことはなく、ただの知識だ。

だからこれといって根拠はない。


けれど、どこかで情報が得られるだろう。それは、もちろんあの場所。


「…スザンヌに行く必要があるーー」


◆◆◆

「お母様、お母様!これを見てくださ……」


まだあれは私が10歳の頃。

家庭教師が実施した試験でとても良い成績をとり、褒め称えられた。

それが嬉しくて、母に報告しようと部屋を訪れたのだ。


そしてそこには、沢山の人が集まっていたーーもちろん父も。


「おかあ、さま…?」


父は私の姿を見とめると、すぐに追い出そうとした。


「子供が見て良いものではない!」


そう言っていた。

だけど、私の視界には確かに映ったのだーー血を流し倒れた母と、側には一つの短剣。


でも、誰しもがおかしいと思った。


母が倒れたのは横向き。だけど、短剣は手に握っていたのではなく、母の正面にあるわけでもない。はたまた、後ろでもない。

1メートル離れたところの、足元にあったーー。


そんなこともあるだろうと片付けられた。


父はまだ即位したばかり、力もなく、その時は色々と国に問題が多発していた頃であったため、「まだ調べろ」などと言える状況ではなかった。


だけど、私は知りたい。

皇后エレナの息子として、アスレリカの皇太子として、ペンダントを形見に渡された者としてーー。



全てを知るために。







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