第36話 魔術とペンダント

◇◇◇

「アレクシス様、こんなのはどうでしょう?」

「うん、いいと思う。これは?」


二人で話し合いながら「瘴気」と「マナ」について探していく。主にアレクシス様が前者で私が後者を調べるということにした。


そしてとうとう。


「アレクシス様」「セシリア」


「「見つけた!!」」


◇◇◇

「大臣、皆は」

「避難させました。というのも、エヴリア子爵家が大型船を貸してくれまして、多くの民がアスレリカ領のククル島へ行きました」


ククル島というのは、アスレリカが昔戦争で他国から奪い取った土地で、「島」とは言っているが広大な面積を持つ。しかし、ほとんど住人がおらず、未開の地であった。


「…アレクシス様。このまま皆さんには開拓していただきましょう」


セシリアが言う。もちろん、私もその案は考えていた。

彼らはあの渦から逃れたいだろう、そこでアスレリカが助けてくれたとなれば、命令に従うはずだ。


リュカに伝令し、私とセシリアは展望台へ行く。

すぐそこに、渦がある。吸い込まれる可能性と覚悟を決めて、私たちは登った。


「…セシリア。覚えている?」

「ええ。確かーー」


体内のマナを手に集中させる。泡を作る形で、何層も何層も張り巡らせてーー。


初めてだから、できないだろう。

だけど、頼れるのは、この方法しかない…。


「ーー光よ、壁を作り、攻撃を防げーー【光壁ライトウォール】」


できるはずがない。

だけど、やってみればーー。


急に、渦によって皇都に吹いていた爆風が途絶えた。

途端に、大きな壁ができる。


「でき、た…?」


そんなはずはない。

だって、私がやってみてもーー。


何も、起こらなかったというのに。


「…セシリア。できる分だけでいいんだ、やってみてくれ」

「もちろんよ」


すぅ、と息を吸って、セシリアは再び詠唱する。


「ーー光よ、すべてを照らせーー【閃光フラッシュ】」


一瞬だけ、周りが光る。浄化はさらにはっきりとして見える。

その時、私のペンダントが光った。赤いペンダントは、これは、宝石ではないのかーー。


その瞬間、赤いペンダントが眩い光を放った。


そして、勝手に口が動いていたーー。

「ーーマナよ、時間を停止せよーー【時間停止タイムストップ


◇◇◇

「っ、なんで、こんなっ!」


魔術は私とジークフリートだけが使えるはずなのにっ…なんであの小娘が、大きな光壁を作ってるの!?


ペンダントは、まだ魔術の礎が残る国、スザンヌから特注したもの。

そのペンダントを持っていないと使えないはずの魔術を、上手に使いこなすセシリア。


「許さないっ」


私より目立って、功績を上げるなんて許さない。

手柄を立てるのは私なんだから。








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