第23話 皇妃の計画

まさか、アレクシス様に求婚されるなんて!

でも、これが形ばかりだと言うことは十分理解している。これは、私がコーネリアに帰らなくて済むように、と考えてくださった、一種の提案なのだから……。


「婚約発表を行うパーティーを開く。だけど…コーネリアの王族はいるだろう。大丈夫かい?」

「はい、もちろんです。父には連絡したのですか?」

「うん。実際に来るそうだよ」


来る…。国王陛下と王妃陛下はともかく、王太子とアメリア、父は……。


なんて、言われるんだろう。

それとも、父は「よくやった」なんて言うのかしら…?


「まあっ。綺麗ですよ、セシリア様!」


ミカが讃えてくれる。けれど、リカは…この場にいない。最近はあまり姿を見せず、どこかに行っているらしいのだけど。

やはり、警戒して正解だったようね。


「さあ、行きましょう。殿下がお待ちですよ」


◇◇◇

「…で?手配は終わったの?」

「はい。完了いたしました」

「ふふ、ありがとう、よくやったわ」


あの小娘セシリアと皇太子の婚約。それを聞いて、思わず殺したくなったの。

要らない子。次期皇帝になるのは、私の子供でないといけないわ!


だから、殺さないとねーー。


「皇妃殿下。毒ガスは…」

「ええ。ロードン伯爵から、と伝えておきなさいな。決してーー私の名前を出してはダメよ?」

「はい。わかっております」


最近賄賂を大量に送ってきたロードン伯爵。

このチャンスをみすみす見逃すわけにはいかないと、利用させてもらったわ。


私は失脚できない。


だから、人のせいにする。実際、協力を持ちかけてきたのも向こうロードン伯爵だもの、誰も私のことなんて疑いやしない。


だけど、ロードン伯爵はまさか、自分のせいにされるなんて思ってもないでしょうね。

準備は全て私がしたし、ただあいつは捨て駒なだけ。

ただ何も知らずに箱を「祝い」として献上するだけのことーー。あげたのは「ロードン伯爵」になるから。


でも…上手く動いてくれない可能性も出てくるからーー。


「リカ。ロードン伯爵を呼びなさい」

「はい」


ロードン伯爵は媚び諂うこびへつらうような顔をしてやってきた。


「ロードン伯爵。期待してるわよ?もう一度見直しよ、手順を並べて言ってみなさい」

「は、はい…。まず、用意した箱を献上します。その中には、宝石を入れています。そして、同時に形の異なる鍵を渡します」

「ええ、そうね」


箱は「鍵」がないと開かない。だから、鍵を一緒に献上するわけだけど。

作ったのは特別な鍵、つまり、鍛冶屋に依頼しないといけない。


明細書も必要だ。

その依頼は全て、ロードン伯爵にやらせた。私は、「鍵」には関わっていないことになるーー。

宝石はロードン伯爵領で取れる鉱産資源を加工して作らせたもの。これも、明細書には「ロードン伯爵」と書かれてあるだろう。

全て、私が無実になるようにできている。


ロードン伯爵が馬鹿でよかった。




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