第17話 レストラン

◇◇◇

自分でもよく分からない。

だけど、いざ自分とペアになるドレスを贈ると、なんだか急に恥ずかしくなった。

しかも、それを着たセシリアが美しくて見惚れてしまった。


そして、今も思い出してしまうのだが…。


「殿下。顔がにやけております」

「マ、マルクス」

「セシリア様が綺麗だったのですか?」

「ああ。綺麗、で…」


うわあ、なんで言ったんだ!

マルクスはにやにやとこっちを見ている。ああ、こいつには色々と煽られるのかな。


でも、本当に綺麗だった。

いつも会う時に思っていたことだが、どうしてあのぼんくらーーではなくジークフリート王太子はセシリアを手放したのだろう?


ロイヤルガーデンの時に何度も見せた微笑みは、とても可愛くてーー。


うん?可愛い?


「殿下。惚気はそのくらいにして、仕事を」

「え?惚気てないけど…」

「可愛いだの綺麗だの、聞かされてるこっちの身にもなってください」

「ぜ、全部口に出てた!?」


はあぁぁぁ。

でも、これは贅沢な悩みな気がする。


◇◇◇

「マーガレット」

「セシリアさん!」


私は仕事を辞めることになった。流石に、貴族だとバレたからには、ね。

そして、今日はそのレストランに来て、私が辞めることを伝えると。


「うぅ…セシリアさんいないなんてっ、悲しいですぅ〜」


と大号泣、この有様だ。

オーナーがまあまあ、落ち着け、と嗜める。


「今度は「客」として来店するわ」

「…え?」


マーガレットが驚きの声を上げる。


「そ、そんなにお金持ちなんですか!?」


あ、そうだった…。

ここは高級レストラン。富裕層のうちの富裕層しか来店できないだろう。来るのは大きな商会のトップか貴族だ。


「…実はね」


こそっと耳打ちする。


「私、コーネリア国の公爵令嬢なの」

「えぇ!?」


でも秘密にしててね、と言うと彼女は嬉しそうにこくこくと頷いた。

もちろん呼び方も今のままで良いと伝えると、もっと喜ばれた。


最後に、みんなに感謝を述べて、その店をあとにした。


「ただいま」

「おかえりなさいませ」


初めはコーネリア国の貴族だからと私に距離を置いていたリカとミカも、だんだん心を開いてくれるようになった。特に、私の大好きなお菓子や紅茶をたくさん作ってくれるようになって、毎日頬張っている。


「殿下が明日、会いたいとおっしゃっていました」

「分かったわ」


それにしても、皇太子って多忙なはずなんだけど…どうしてあんなに私は城下で会っていたのかしら?






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