第15話 バレた。

◇◇◇

「こんにちは。また会ったね、セシリア」


偶然を装っているけれど、どうせ必然的に会いに来たんでしょう。と思いながら私たちはとりあえずいつもの場所へ向かう。


いつものーーというのは、街のちょっとおしゃれなカフェのこと。会う回数が増えるにつれて、だんだんこの場所が定着してきている。


「…それで。今日は何の用でしょう?」

「なに。コーネリア王太子のことで、知っていることがあるかなと思ってね」


コーネリア、王太子?どうして急に?


「…コーネリア王太子殿下がどうかなさったのですか?」

「うん。最近、暴行がひどいらしくて、噂になっているんだよ」

「…隣国で帝国であるアスレリカまで届くとはーー噂とは恐ろしいものですね」


それも、上流階級の方々に。


「噂にはどうやら尾ひれがついているようで。ーー婚約破棄したあと、その後悔でーーなんて語られているんだよ」


いやいや、そんなことあるわけないでしょう。

あの王太子がアメリアを溺愛するばかりにーーとかならまだわかるけど!(←わからない)


そこで、私はふと気づく。

王太子の仕事は私と王妃様でこなしていた。でも、私がこの国を出ると告げた時、王妃様は「じゃあ、私、ジークフリートの仕事をするのはやめにするわ」と言っていた。つまり、仕事すらできずに荒れているとーー?


「そこでね」


ごくり、と唾を呑む。


「セシリア、ジークフリート王太子はどんな人だったのか、知ってる?」


これはーーもしや、バレてる?


「…私は平民です。分からないものは分かりません」

「そうかなぁ」

「はい、そうです」

「そういえばセシリアって、出会った時からやたらと平民を主張してくるよね」

「え、ええ、まあ」

「なんで?ーーセシリア・ラファエル公爵令嬢」


…!

バレて、いた。そして、この人は、そんな公爵令嬢の私を相手にしても何も怯える様子はない。公爵家の人は、おそらく敬語となる。なら、残るはーー。


「…あなたは、一体誰なんですか?」


彼は、にっこりと笑った。


「今度、私が開くパーティーに来て欲しい。もちろん、君は「主賓」だ」

「…ですが、平民の私など…」

「正式に追放されたのかい?」

「い、いいえ」

「なら、君はコーネリア国の公爵令嬢として参加できる」


絶対そのパーティー、大規模ですよね…。

だが、政治の話はできるのは良いかもしれない。


「…でも、エスコート役がおらず…」

「私で良い?」


…は?

待て。多分この人は、めちゃくちゃ偉い人。そんな人に、まず婚約者がいないわけが…。


「婚約者は、今まで全員断ってたからね」


それってつまり、俗に言う「女嫌い」では?大丈夫なのでしょうか、私で。


「では、ドレスは何色で…」

「こちらから贈らせてもらう」


ーーえ?

今なんて言った、この人。まさか、「訳あり」の私に、ドレスを贈る!?それは、つまり恋人ですって言ってるようなものでは。


でも、多分それ言っても聞かないんだろうな。

私は大人しく、パーティーに出ることにした。



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