第11話 助けるために

「注文して良いか?」

「はい、承りますね」


これとこれ、と注文して行くこの若い男性は、後から聞いた話によると、どうやらこの店がオープンした頃からの常連らしい。だが、だれもその正体を知らないという。


「ハンサムですよね、かっこいいですぅ!」


一緒に働くことになった彼女はマーガレットといい、俗に言う「夢見る少女」だ。

そこで、私はふと気づく。


何かしら、あれ。


魔石のような、でも違う、赤色の宝石のペンダントーー。

それに、なんだか彼は正体を隠している感じがする。


「…よくないわね」


人のことを探るのは。


「?何か言いましたかっ?」

「ううん。なんでもないわ」


今日からバリバリ働いた私は、疲れきって即寝落ちしてしまった。


次の日も、その次の日も、バリバリ働いて私は褒められた。

さらに、私はマーガレットと遊びに行くことになった。


「わぁ。これ、可愛いわね」


私が見つけたのは、一つのヘアアクセサリー。

マーガレットは、


「た、高っ!?」


と驚いていた。もちろん、私は買ったけれど。

貴族令嬢だったから、金銭感覚が麻痺してるのかしら。

こんなふうに、人と出かけることなど許されなかったし、時間も妃教育や家の仕事で取れなかったから私には新鮮だ。そうして、お出かけも終盤に差し掛かった頃ーー。


「…大変。路地裏に!」


一人の少女が路地裏に連れて行かれたのだ。


「セシリアさんっ、行っては危ないです!」


だけど、私は自衛用の短剣を常に懐に入れているし、扱い方も、「妃教育の一環」として教えられた。王妃や王太子妃は、命を狙われやすいからだ。

だから、少なくとも私はマーガレットよりは助けられるはずーー!


「あ?のこのこ自分から来てくれてありがとな。可愛い嬢ちゃんじゃねえか」


怖いけど、怖いけど…!


「借りさせてもらうわ!」

「お、おい…!」


剣だってなんども握ってきた!自分のために、殿下の相応しくなれるようにーー。


剣が混じり合う。

カン、カン、と音がするたび、私は恐怖に駆られる。

だけど。人を助ける方が先。何も抵抗する術がないのが、一番怖いはずだから。


「今のうちにっ、逃げてっ、…!」


ふぅ。終わったかと思えばーー。


「残念だったな」


残党が、一人…!

しまった。殺される…!


どしゃぁ。


血を出して倒れた彼の後ろにいたのはーー。


「大丈夫かい?」


金髪碧眼…だがしかし、レストランの常連と同じ顔と声をしていた青年だったーー。

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