第4話 婚約破棄

「なぜ、殿下ではありませんの?」


今日は王立パーティー。

そして、私の念願叶う、婚約破棄を望む場所だ。


何が殿下じゃないか、というと、もちろん私のエスコート役。

父にお願いし、またその要求をのんでくれたため、アメリアが殿下の横に並ぶことになったのだ。


「セシリア、本日をもって、婚約を破棄させてもらう!」


なぜか、殿下はそう言う。

そして、さらにアメリアへの冤罪もふっかけられる。


「大切なはずの妹アメリアを虐めていたそうではないか!」

「お姉様は…私のものを奪ったり、水をかけたり、怪我させたりしてきました…」


よく被害者ヅラできるわ、ほんと。

誰がどうしたのか、きちんとはっきりさせたくなるのが私の性分だ。


「その件ですが、もう婚約破棄申請書は私作りましたの」

「は…?どういう気の迷いだ!?」


そうそう。

私の(元)婚約者は外面だけは、「できる男」なのだ。だから、全てを先回りすることで可能性を潰すと、彼はいらいらするはず。


「どういう…?それはもちろん、アメリアと殿下が不貞なさったからではありませんこと?」


「どういうことだ?」と場がざわざわとうるさくなる。


「だ、黙れ!なんだそのでっち上げは!?」

「申し訳ございませんが、妄想ではございませんの。証人がおりますわ」


浮気現場で証言してもらった使用人とはまた別の人を連れてきた。

殿下は、何も言えなくなる。


「殿下とアメリア様は、体を重ねられていて…」


と、言いにくそうではあるが証言してくれる。

まあ、王族への侮辱罪に問われたって何も言えない内容だ。


これには貴族たちも信じたみたいで、ほっとする。そして、私は婚約破棄申請書を殿下の前に投げつける。


「私は殿下と婚約破棄という、似たような望みを抱いておりました。浮気されて、とても辛かったのです…。どうか、婚約破棄を受け入れてくださいませ」

「え、あ…」


これが、「浮気された傷物」に同情を寄せる演技で、悲しみにくれる令嬢。

私には、お易い御用だ。


「っ…わかった。そのかわり、新しい婚約者はアメリアとする!」


やっぱり、馬鹿だ。

だって、このジークフリート殿下は、アメリアとの不貞がバレたにもかかわらず、婚約者としたのだから。

しかし、殿下には相応の処分が下されるだろう。

アメリアの望みが、「皇太子妃という地位」か「ジークフリート殿下」か。

前者であれば、逃げ出す可能性もあるが…殿下はその事に気づいてはいなかった。


「慰謝料を…お願いしたいのです」


今日は、国王との正式な婚約破棄の申請場。

謁見の間で、私は陛下と対面していた。


「慰謝料、か…」


しかし、あまり前向きな返事はいただけない。


「理由は2つございます」


さあ、説得の時間よ。








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