人類にとっての最高の発明

功琉偉つばさ @WGS所属

99%のひらめきと1%の努力

「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」


 そんなふうに約1000年前の偉大な発明家はそう言ったらしい。


 今は西暦3757年。地球は荒廃してきており、未来は絶対に発展するものだという過去の人間の身勝手な考えや行動から人類は絶滅の危機にひんしている。


 僅かな人間は地下に暮らしており、地上なんて住めたものではない。地上には硫酸の雨が降り、秒速数百キロの暴風が吹いている。また高濃度の放射線が飛び交っている。この世界に必要なものは大きな、世紀の大発明だ。


◇◆◇


 ある日、まだ人類が地上に住んでいた頃、西暦2400年。ある一人の天才科学者が『不老の薬』を発明した。この科学者は人類の欠点は短い寿命であると考えていた。これは服用するだけで人間の細胞の衰えをなくし、常に細胞分裂が活発に行われるようにするものだった。その薬のおかげで全人類は25歳ごろのとても健康な年齢から年を取らなくなった。


 しかし人間同士の争いは絶えなかった。いや、余計に加速した。そんな数十億人分の『不死の薬』を一気に製造できるわけではなく、製造ができるところに人間が押し寄せ、また価格も高騰して余計に内戦などが起こった。


 ある日、まだ人類が地上に住んでいた頃、西暦2800年。ある一人の天才科学者が『空間収縮装置』を発明した。この科学者は人類の欠点は時間の使い方が非効率なのだと考えた。これはいわゆる『どこでもドア』のようなもので、ある場所と場所の間の空間を歪めて短縮させるというものだ。これによって交通手段が変化した。空港はすべてこの装置に置き換わり、移動時間が大幅に短縮された。これによって月や火星のテラフォーミングなども活発化した。


 しかし、これでもまだ人間の争いは絶えなかった。そしてもっと加速した。その装置を悪用した暗殺が多発し、世界に安全なところなど無くなってしまった。


 ある日、まだ人類が地上で生きていた頃、西暦3000年。ある一人の天才科学者が『永久機関』を開発した。この科学者は人類にとって必要十分なエネルギーが存在しないから争いが起こるのだと考えた。それは物理法則をも超越した発明であり、エネルギーが無限に手に入るようになった。ダークエネルギー、ダークマターの本質を利用した装置で、なんと反発係数=1の物質を作り出すことに成功した。これによって永遠に自動で外力を加えずに動き続ける装置が完成し、世界中がエネルギーで満ち溢れた。


 しかし、これでもまだ人間の争いは絶えなかった。そしてもっと悲惨になった。その装置を独り占めしようとする国家が現れ、またエネルギーが切れないため従来よりの高いエネルギー使用量の武器が更に開発された。それにより、核戦争よりももっと悲惨な戦争へと発展した。


 ある日、人類が地上に住めなくなった頃、西暦3500年。ある一人の天才科学者が『タイムマシン』を発明した。この科学者は人類には『夢の具体化』が必要だと考えた。500年前に発明された『永久機関』によって実現された。『永久機関』のエネルギーを利用して『空間収縮装置』を更に発展させて時間軸のつながりを逆行、または進めれるように高次元方向への空間の移動を可能にした。

 それによって過去から未来までに行くことができるようになった。しかし、その天才科学者はこのタイムマシンが世界に広まり、犯罪に使われるだろうと思い小さな小さなミニチュアサイズの実験用のタイムマシンを残して他の実験装置といっしょに死んでいった。


 その時でも世界では争いがなくなることはなかった。



◇◆◇


 そして西暦3700年。ある一人の天才科学者がこんな言葉を残した。この科学者は天才すぎた。まさに神から才能を授かったものだった。その科学者は人間が考えれることはすべて可能にした。


「この世界にはひらめきが足りない。今の世界、人間が考えられることは何でも実現できてしまう。魔法だって化学で可能だ。転生だって、他の時間軸にある星を探し出せばいい」


その科学者は死に際にこんな事を言った。『不老の薬』を飲んでいたとしても人間の体には300年ほどで限界が来るのだった。


「この世界には 99%のひらめきと1%の努力 が必要だ」


その科学者は伝説となった。


 そして西暦3757年。ある一人の普通の科学者がある発明をした。それは何の変哲もない何枚かの『写真』だった。そこに写っていたのは荒廃していない、自然が豊かな地球の写真だった。 

 そしてその科学者は言った。


「この世界には…この世界の人々には『心』が足りていない。だからみんな争うのだ。もう一度考えてほしい。この世界はこんなにもちっぽけなのだ」


 そしてまたこの科学者は続けた。


「そして、もう一つ、今の人間には『想像力』が足りていない。『心』と『想像力』があればきっとこの世界は良くなる。科学は進歩し続けている。いつかは元の世界に戻れるのかもしれない」


そして死に際に初めて地上に上がっていった。


「『想像力』こそが人類にとっての最高の発明であったのだな」

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