第六話 お屋敷っ!?
言われるがまま、私は靴を履いて叔父さんについて行くことになった。
ふぅ~~、もうここまで来たならやるしかない………。
少し緊張している部分もあるけど、これはマノちゃんのイジメを無くすため。怖がっていたらダメなんだっ!
「母さん、あっち行ったぜ!見失うなよ!」
ケントの声に、クノちゃんが「お――っ!」と手を上げる。
その様子を見たコン兄は人差し指を口に当てた。見つかりそうになってた………危ない。
お母さん達は私達が来たことの無い道を迷いなく進んで行く。どこ行くのかなと思っていたけど、数分後には、お母さん達が立ち止まった。
えっ………こんなに大きな…お屋敷っ!?
いや、その隣にある小さなスーパーに来ただけ………じゃないっ!
お母さん達はおびえる様子も無く、堂々とお屋敷の中に入って行く。
三階建てぐらいの真っ白なお屋敷。門は二メートル越え。庭はどれだけ続いているか分からないぐらいに広い。そんな場所に何で平然として入って行けるのっ。もしかして前世は王族だったのかもしれない………………。
お母さん達の姿が見えなくなると、コン兄がお屋敷に近づいて行く。
「皆さん、来てください」
「あっ………うん」
私はそう答えた………けどっ!
あんなにお屋敷に近づく度胸は…………あれ? 皆近づいてる? マノちゃんまで!? な、何で?
こ、これは覚悟を決めるしか無いんだろうなぁ。私は足取りを重くしながらもお屋敷の目の前へ来た。近くと見ると、お屋敷の輝きで目がくらみそうになる。
お屋敷の表札には『座敷』と書いてある。
「座敷って、コン兄の名字だ! 」
「そうだね………ここはコン兄の知り合いの家?」
「いえ、違います。考えられるとしたら………親戚の家ですかね。もしくは、単に名字が一緒なだけかもしれませんが。でも、その可能性は極めて低いです」
親戚の家…?
「それならケントも入れる!? 入りたい!」
「えっ、クノは入りたくない! マノは? そう思うでしょ!?」
マノちゃんがクノちゃんの言葉を聞いて、何回も首を縦に振る。
ワクワクしていたケントは、シュンと垂れ下がった尻尾が見えそうなくらい落ち込んだ。尻尾は生えないけど、耳なら生える。今、耳が出たら面白い…かも。
「ネネちゃんもそう思う? ねえ! ほら、ケント、皆が言ってるよ! 今日は入らないでおこうっ」
あ、あらら………私、何も言ってないのに…。
でも確かにちょっと、入るのは不安。
「え――――! 姉ちゃんまでっ!? でも、マノちゃんが言うからなぁ…………」
「そうですね。お父さん達に見つかってしまったらダメですから、今日は帰りましょう」
「やった――――!」
ため息をつきながら単純なケントを睨んだ。
お母さんにばれたらきっとこれからイジメを無くすために行動出来ない。だから、帰るのが一番。
クノちゃんの喜び方は、お祭り騒ぎより大きい。きっと、この豪華さに恐れちゃったんだろうな。それを見ていると、早く帰りたくなって来た。
私もちょっと怖かったのもあるけど、エヘヘ。
コン兄の家に帰るために、私は体をUターンさせた。
 ̄/¬_ ̄/¬_
帰ってから作戦会議。これからどうして行くか話す。
「あれは絶対手がかり! 行くべきだっ!」
「そうですね………」
ケントが体を震わせながら、声を荒げる。そんなにお屋敷に入りたかったのかなぁ………。
そう言えば、昔の夢はお金持ちだったような…なるほど。
コン兄もケントの言葉に軽くうなずいた。
「ヤダ! 怖い! ダメ! 泥棒さんごっこ!」
「クノちゃん、それを言うなら不法侵入。泥棒さん『ごっこ』じゃ、本当にやったことにはならないよ………。でも、やめておいた方が良いと思う」
「そうだよね。ケントの行きたい気持ちは分かるけど、違う家だったら不法侵入になるよ?」
「いいや!」
ケントが真剣な目つきで、私を見る。
いつもキャッチコピーは『ヤンチャ破天荒ボーイ』なケントだけど、これだけは真面目。何だか、今日は雷と雪と槍が降りそうな予感。
「だってこれを逃したら、マノちゃんを救えないかもしれないんだよっ!」
「でも…………」
「ケントさんの言う通りです。手がかりはこの一つだけですから」
うっ…と私達は息を詰める。それなら行くしか…無いか。
見つかっても子供だから罰せられないはず。クノちゃんもマノちゃんも納得してないかもしれないけれど、誰でもはっきり分かるぐらいにうなずいた。
アニマルイトコ!! 石川 明日香 @madokaasuka-kinsyo
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