第五話 ついて行ってみる

 分からないことだらけ!どうしようっ、と迷っているとガラリと扉が開いた。ツインテールの小さめの女の子………あれはっ!


「ま、マノちゃんっ!?」

「まのんさんっ!?」

「マノっ?」

「マノさん!?」


 どうしてっ、マノちゃんは用事があるんじゃなかったの?しかも今日集まっている場所は、コン兄の家だよ?

 私は混乱を抑えられずに、目が泳ぎ続ける。

 あれっ、まさか………私達が話してたこと全部、聞かれてた?


「ごめん………隠れて聞くつもりじゃなかったんだけど…」

「あ…えっ………あっと………ごめんなさいっ。まのんさん、傷つけて――イテッ」


 私は犬斗をチョップしてから、マノちゃんの方を向く。

 ううっ、マノちゃんの前だけカッコつけて………まったく、ケントは…。


「ごめん、マノちゃん。コソコソやってて…でも、マノちゃんを救いたいという思いは本当なんだ」

「マノ、ごめんっっ」

「マノさん、僕からもすみませんでした」


 私の後に続き、クノちゃんとコン兄も頭を下げた。それを見て、マノちゃんは一瞬固まったけれど、すぐに首を振り出す。


「謝らないで。ううん、心配してくれてありがとう。でも、マノのことだから………」


 もうやめて、と言われるんだ。しょうがない、勝手にやりすぎた。マノちゃんを余計に傷つけたと思うと胸が締め付けられる。

 私は下を向いて、どうやったらつぐなえるのかを考え始めた。


「あの、まのんさんが傷つくのは絶対にヤダ! ケントは何と言われてもやるからっ!」

「違うんだ。マノも………やる」


 マノちゃんが今まで見たことも無いような、凛とした目で私を見つめる。

 その目に吸い込まれそうになり、私は固まった。


「いやっ、やらなくても良いんだよっ。でも………イジメを無くすためにおじいちゃんおばあちゃんについて調べるのなら、マノも一緒にやりたい。お願いっ!」

「お願いの答えは、言われる前から決まってるよ」

「えっ………………?」

「「「「もちろんっ!」」だよ」です」

「っっっっ!ありがとうっ」


 このマノちゃんの笑顔を守りたい、というおもいはどんどん私の中で大きくなる。


「あっ、あと…ケント君にお願いが………」

「ひぇっ、へい! なんでっしゃろ?」

「敬語、やめてほしいな………仲良くないみたいで。ネネちゃんがまのに接するみたいに話してほしい、な………」

「………………………わ、分かりま、分かった…」


 あらら―――、ケントから明らかに『ガ――ンッ』と言う空気が出て来た。マノちゃんはクノちゃんと「しっかり言えた!」って喜んでるけど。この落差は何だろう………。面白いような悲しいような………。


「お―――い、狐平! ちょっと父さん、兄妹と会ってくるぞ~!」

「………!? 分かりました~っ!」


 コン兄が目をウロウロさせた後、大声で返事をした。


――ガチャリッ

「行きますよ!」


 えっ………?

 コン兄がバックを持って立ち上がる。どこかに出かけるのかな? さっきの面白い空気は跡形も無く消えて行った。

 コン兄のお父さん…スズ叔父さんについて行くと言うこと?


「お父さんは、兄妹と会う。つまり、ちょうど不思議な祖父母について分かるかもしれません。行きましょう、尾行しに」

「「「「えっ………!?」」」」


 び、尾行!? 尾行って何か悪いイメージだから、やめておいた方が良いんじゃない!?

 そう言う間もなく、コン兄は外へ出るために靴を履き始めた。いつもは冷静なコン兄がこんなことをするなんて、信じられない………。

 ノリノリでケントとクノちゃんは靴を履き始めている。

 私はマノちゃんと目を見合わせて苦笑いを浮かべた。

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