第7話 永峰さんは勉強会がしたい
「日野森、ちょっといい?」
仮交際四日目。三限前の業間休み。
号令を終えてすぐに、俺は右隣の席に座る永峰に声をかけられた。今期も学級委員長になった彼女は、リア充だろうがぼっちだろうが、分け隔てなく誰にでも話しかけに行くのをよく見かける。
まあそれが今回、俺にも回ってきたんだろう。
「あんた最近、友達出来た?」
「は? なんで急に、そんな?」
「別に。ぼっちのアンタが急に昼弁当持って
「あぁ、そういう」
うっ、これは困った。
心当たりしかない。
流石に俺と聖城とで弁当を持って出るタイミングをずらしてはいるのだが、そもそも俺は教室で一人ぼっち飯をするようなタイプだった。
それに一年の時から彼女とはよく近い席になっていたような気もする。そんな永峰にとって、この変化はやはりおかしいと感じるものなのだろうか。
そしてさらに困ったことに、
「あ、ああ、あれな。ありゃ、そう……気分転換。気分転換ってやつだよ」
「……ふーん、気分転換、ね」
永峰は疑わしそうに俺の顔を覗き込んできた。バレたら終わりという緊張感が走る。
「ま、それはどーでもいいや。んでこっちが本題なんだけど。あんた、今度の勉強会、来んでしょ?」
その言葉に俺は安堵した。どうやら疑いの目は一旦収まったようだ。
そして永峰と言えば勉強会だ。彼女は皆で進学しようという名目で、テスト前になるとクラスの赤点組と成績上位組を集め、よく勉強会を開いていた。
ほんと企画力も行動力もスゲぇ奴だ。ちなみに俺も国語だけはマジで点取れないので一応常連組ではある。
そんな彼女の提案に対し、いつもならすぐにオーケーを出すところだが、今回ばかりは……。
「答え、明日でもいいか?」
「……え? まあいいけど」
まだ答えを出せない。というのも今は聖城との仮交際を優先したい。だからせめて、彼女と話をした上で決めたいと思い、俺はそう答えることにした。
*
「──と、言う訳なんだが」
「うん。大体聞いてた」
昼休憩。
いつもの校庭裏に着くなり、俺はさっきの永峰とのやり取りを聖城にも話した。まあ大方彼女も聞いていたようだが。
聖城はどんな教科もバランスよく、赤点の心配も無さそうだ。だから勉強会にも誘われなかったのだろう。
にしても前から思っていたが聖城、
オムレツに卵焼き、唐揚げにベーコン、鮭の塩焼きにしらす……と、『やたらたんぱく質の多い献立だなぁ』なんて思っていた。
「日野森君は勉強会行かなきゃヤバい?」
「言っても国語だけだし、ヤバいって程でもないけど」
仮交際二日目からは勉強に力を入れるため、息抜きに彼女から借りた『色トラ』を読むくらいで、一旦アニメ鑑賞はやめている。
この調子なら国語の赤点も回避できそうだが……。
「そっか、それなら勉強会なんて行かなくても、国語なら私が教えてあげる」
「え? そんなの……悪いって」
いやそれはもちろん滅茶苦茶嬉しいが、ここで彼女に頼ってしまうのはかなり恥ずかしいことではないのか?
この前彼女に『もっと勉強を教えられるように頑張る』と言ったばかりなのに、こんなこと……。
「いいや教える。だって恋愛って二人で支え合うものでしょ?」
「……!」
そう思い悩んでいた俺に、彼女は少し強い口調でそう言った。そう言えば彼女から借りていた漫画本(色トラ)にも似たような台詞があったような……。
「だから日野森君も……私の分からないところは一緒に考えて」
「……分かった。そういうことなら」
彼女がそういう関係を望むのなら、俺が
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます