第50話

「あ。待って。箱を。…稜星様がここに来たんだし、開けて良いわよね」

「え」

 止める間は無かった。王后が、無邪気に開け始める。鍵の合う、微かな音。蓋が、ぱかりと。

「はい、これ」

 取り出されたのは、書状と…また、箱。今度は鍵はついてないようだ。木で出来たものであまり大きくも深くも無いもの。

「……。更に、箱が延々と入ってたり?」

 入れ子構造になっている? と疑ってしまう。もしそうなら終わりはどこだ。

「いいえ? 箱はこれでお終いよ。この中に入ってるのは別のもの」

 王后は笑っているが、いつも以上に笑みが深い気がする。…何か、ある?

「……? その、箱。何か…あれ?」

「稜星さん?」

「見覚え、が…ある? ような?」

 稜星にしては心許無い口調だ。が、眉間に皺を寄せて真剣に記憶を手繰っている。

「とりあえず、指示文を読むわね」

「はい。…いや、何です? 指示文って」

「指示の書かれた文章よ」

 そのままである。王后は書状の方を開封していく。

「あら。そういえば、淳風様ったら。かなり長文書いていたわね。全部読むの大変。このくだり、いらないでしょ。もう端折っちゃいましょうか。…えーと」

 良いんだろうか、それで。迷夜たちだけでなく、王族たちも固唾を飲んで見守っている。と言うか、見守るしかない。

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