第36話

 稜星が様々な事情を知らされるまでに、二年程かかった。

 その間に稜星は父と引っ越し、母の弔いを済ませた。また、祖父母と伯父一家もこれまで住んでいた場所を離れた。伯父は酷く落ち込んでいた。自分が妹を家に呼んだがために、稜星たちの居所を掴ませてしまったのだろうと。父はそんなことは無い。狙う奴が悪い、と力無く否定していた。

 引っ越した先で、氷輪は子どもを引き取った。親を亡くしたばかりなのに預かり先が無く、自分だけになった家に住んでいる子だった。親戚はいたがその子を引き取らず、しかし家は売りに出していた。その家を買おうと思っていたところだったので、その子はこのまま一緒に住めば良い、となった。矢厳、と名乗ったその子ははきはきとした男の子で氷輪や稜星に『それで良いんですか?』と疑問をぶつけてきたが、二人が気にしなかったので、矢厳も諦めて三人で暮らした。恐らく、二人ともが喜雨を喪ったことで麻痺している部分があったのだと思う。どちらかと言うと、二人の様子を心配した矢厳が仕えてくれる形になったのだ。

 遊道の側では、遊道と喜雨の両親が相次いで亡くなった。喜雨の死による心労が祟ってのことだった。

 生活が落ち着いた頃、稜星は氷輪と遊道に己の事情を教えられた。遊道の子である孝心と彩維、そして仕えてくれている矢厳もその話を聞いた。

 氷輪、稜星は王家の血を引いている。これは本来秘することでは無かった。先々王の弟の血筋だ。後ろ暗いことは何も無い。

 だけど。

 現王である淳風は実のところ…王家の血を引いていない。淳風だけでは無い。先王の子らは皆、王族を名乗っているものの、誰も荷王家の血統では無いのだ、と。


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