第33話
稜星は耳が良い。梢花の昔話に孝心が撃沈し、何とか復活している様子、を聞くともなしに聞いていた。
稜星にとって迷夜は口説きたい相手だが、孝心には好敵手と言うことになるだろうか。どっちにしても大変だな、と笑う。
その相手は稜星が立て直した書棚に、本を入れていき、時折真剣に脱線して本を読み始めたりしている。こうしていると、ごく普通の愛らしい少女なのだが。
が、彼女はそれだけの存在では無い。稜星を巻き込んで、稜星に巻き込まれることを許容したとんでもない女性だ。計り知れない。
「迷夜」
読書をし出したことを注意すると、はっとして本を閉じる。その所作は微笑ましかった。本の題名は『王侯貴族に流行りの意匠・図案全集』。…矢厳から迷夜が宰相の娘をやりこめた時の話は聞いていたが、こんなところでまで。勉強熱心ではあるが。
…王侯貴族、ね。
彼女は、自分の複雑で面倒な出自を、どう思うのだろう。…それを彼女に明かしたその上で、自分は彼女を望んでも良いのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます