第20話
母、白夜は、貧しい家の出だった。両親共に体が弱く、白夜は彼らと弟二人の生活を守る為に妓女となった。愛らしい顔立ちで、妓楼の者に見込まれていたのだ。
恋仲だった大盟とは、泣く泣く別れるしかなかった。
月日が経ち、大盟が迎えに来た時。白夜は大盟を思い切り突っ撥ねた。自分は変わってしまっただろうし、大盟だって結婚している。でも、妾では嫌だ、とかいうことじゃ無い。
自分たちの所為で無くとも、決定的に食い違ってしまったものを取り戻す方法なんて無い。苦しい。悲しい。こんなの自分じゃない。体も心も重い。誰かに寄り掛かれたらどんなに楽だろう。でも、こんな重荷を誰にも背負わせたくない。だから一人で、ここに居るしかない。
白夜は大盟に説得されなかった。今でも想っているからこそ、怖かった。迎えに来てくれる人だからこそ、その手を取れなかった。
白夜が一歩を踏み出したのは、玉雪が会いに来たからだった。大盟の妻である人が会いに来た、というだけでも驚きなのに、その人は自分のことを連れ帰ろうとおっとりと画策しているようなのだ。…何故。
後で思ったことだが、恐らく白夜は、初対面の時点で玉雪を気に入ってしまったのだ。だから、それからも数度会いに来た玉雪に説得される形で許家へと入った。そして、玉雪も自分を気に入ってくれたら良いのに、と思ってしまった。…更に後に玉雪は言った。『まあ。わたくしたち、やっぱり気が合いますね。わたくしも白夜さんに最初にお会いした時に、同じことを思っていました』と。
母と義母は仲良しである。許家で玉雪に勝てる者なんていない。勝負にすらならない。
迷夜は知っている。両親にも義母にも大切にされていること。だから、出自を馬鹿にされる謂われなんて無い。言う奴が悪い。黙ってて、ほしい。…腹が、立つ。
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