第18話


『私の名前はね。…何処かも知らない遠い場所では、日が暮れてからも薄明るい状態が続くんですって。それのことを指している、と聞いたわ』

 かつて、母は憂鬱そうに言った。

『明るい夜ってどんなのものかしら? 想像もつかないわ。夜は暗いもので、人生は夜を往くようなものでしょう?』

 そして、幼い娘の頭をおざなりに撫でた。

『だから、あんたの名前はそういう名前にしたの。せいぜい迷いながら、夜を往きなさい。ずっと迷いっ放しか朝に辿り着くか、はあんた次第。ま、あんたなら迷う夜も楽しむでしょうけどね』

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