最終話

〈最後の記憶〉


「私は――生きるよ。」

「良かった!」

「にゃぁ!」

「最後の欠片を探しに行かないと!」

「最後の欠片は、僕が持ってるんだ。」

「君が…!?」

「はい、これ。」

彼は封筒を渡してきた。

「まだ大事なことを忘れているよ。」

「あ……」

そうだ。まだ彼の名前を思い出してない。


封筒を開くと、紙と欠片が入っていた。

紙には、表に『海星みほしへ』、裏に『星舞せいむより』と書かれていた。

欠片に触れると、欠片は消えた。

海星は私の名前だ。彼の名前は、星舞だった――!


「星舞くん…星舞くん!」

「ようやく、全部思い出せたね。海星ちゃん。」

「にゃぁ!」

皆、嬉しそうだ。


「もうそろそろ時間だにゃ。」

「うん。」

「心の準備はできてるよ。」

「わかったのにゃ。それじゃあ行くのにゃ!」

眩しい光に包まれ、目を閉じた。



目を開けると、真っ白な空間だった。

「それ!」

猫の掛け声で、扉が現れた。

「この扉をくぐると、海星は元の世界に戻れるのにゃ。」

「扉を、くぐれば………もう、会えなくなるんだね。」

「仕方にゃい。精一杯お別れするのにゃ。それまで待ってやるのにゃ。」

「ありがとう」


海星は星舞に歩み寄り、抱き合った。

「ありがとう!星舞くん!ずっと、一緒にいてくれて、私を、助けてくれて、本当にありがとう!」

「僕の方こそ、あの日、友達になってくれて、ありがとう!」

「私達は、ずっと、友達だよ。」

「友達じゃないよ。」

「…え」

「親友だよ!」

「……!うん!」

2人は涙を流していた。

「またね…星舞くん!」

「またね…海星ちゃん!」


海星は猫の方に向き直り、覚悟を決めた表情で言った。

「もう大丈夫。猫ちゃん、星舞くんのことお願いね。」

「にゃぁ。」

返事を聞いた海星は、扉の方へ歩いていき――


――消えた。


・・・

〈エピローグ〉


見慣れた白い天井。横には両親。なんだか、長い夢をみていたような気がする。隣に、星舞君がいたような……

「お母……さん。」

「なぁに?」

「せい…むくん…は…?」

「……もう、会えないの。」

うん…知ってた気がする。

「そう…なんだ……ごめん…ね?」

私はまた眠った。



数日後。

海星は、病院の屋上に来ていた。

空には雲一つない。さわやかな風が吹いていた。

少女は空を見上げていた。


不意に風が強く吹いた。

「星舞君…?」

少女は少年の声を聞いた気がした。ありがとう……と。

「……約束、忘れないよ。」


・・・


「本当に良かったのかにゃ?」

「うん。あそこでの出来事を覚えていたら、より泣いてしまうかもしれないから。」

「そんなことにゃいと思うけどにゃぁ。」

「良いんだ。海星ちゃんが生きていているから」

「……わかったのにゃ。」



・・・




??年後。


「あ!あれが本物の南十字星…!」

海星は大人になり、ブラジルに来ていた。

彼から貰った髪飾りに触れる。


「約束、叶えたよ。星舞君。」


――end――

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記憶をなくした女の子 夜影空 @koasyado2

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