第13話
〈――3〉
2人が庭園で休んでいた時、猫がやってきた。
「にゃぁ。」
「あ、猫ちゃん」
「欠片が入ってる箱を見つけたのにゃ」
「ほんとに!?」
「どこで?」
「屋上」
「分かった。早く行こ!」
屋上に着いた。
「何…空が真っ赤…!?」
「急ごう!」
「こっちにゃ!」
少女は猫が見つけた箱を開ける。その間、少年は猫と話す。
「猫、箱を見つけたのって偶然じゃないよな。」
「もちろん、今までずっと屋上に隠してあったにゃ。」
「ひょっとして、前のやつも」
「隠してあったのを押してきただけにゃ。」
「そうだったのか。……なんでもっと早く…!」
「まだその時ではなかったから。明らかに欠片が足りなかったのにゃ。」
「……そう、」
少年が言い終わらないうちに少女の声が響いた。
「開いた!」
少女が箱を開けた。
「あれ…?」
箱の中には、何も無かった。
「よく見るにゃ。」
よく見ると、小さな小さな欠片があった。
「その欠片は便宜上あるだけで、何の記憶も入ってないのにゃ。」
「…騙したの…?」
「違うのにゃ!」
「話せるようになったんだ。」
「何を」
「気になったことはない?どうしてこの世界は、君の記憶しかないのか、僕と猫が、どうしてここにいるのか。現実世界の君は、どうなっているのか。」
「え……」
「ようやく、話せるようになった。」
「どれから聞くのかにゃ?」
「…どれでもいい」
少女は頭の整理ができていなかった。確かに考えたことはあった。だけど、何もわからなかった。
〈真実〉
「それじゃあ話そうか。」
少年は一呼吸置いてから全部説明した。
現実世界の少女は手術をした。手術は成功したが、脳へのダメージが少し大きかったた。現在、少女は昏睡状態で生死の狭間におり、段々と、死へ向かっているという。
この世界は神の使いである猫が、少年の願いで作った世界だ。
少女を死なせたくないから。生きてほしいから。本当は、すぐに少女を目覚めさせるはずだった。しかし、脳のダメージで記憶を失った少女をそのまま目覚めさせるわけにはいかなかった。だからこの世界を作り、記憶を欠片として散りばめたのだ。
少年と猫は、お手伝いだ。
少女が理解するまで、少々時間が、掛かった。
「空が、赤いのは、私の死が近づいているから……」
「うん。」
「もしかして、君は、もう――。」
少年は頷いた。
「僕の手術は失敗し、……死んだ。」
「嘘!?約束したでしょ!?一緒に、南十字星を見に行こうって……あ……もう見に行っちゃったね…」
「……ごめん。」
「もう一回、見に行こう、二人でさ…」
「ごめん……もう、無理なんだ…」
「嫌だよ……君のいない世界なんて……。」
「じゃあ、一緒に来るかにゃ?」
「猫!?」
「一緒に……」
「やめてよ…君には、生きてほしいんだ…。」
「どうするのかにゃ?」
猫と一緒に行けば、死ぬ。だけど、少年と一緒にいられる。
まだ死にたくない。だけど、少年のいない世界など、考えられない。
どうしよう……どうしよう……
「時間がないのにゃぁ。」
決めた。
「私は――生きるよ。」
彼のいない世界。だけど、私は――。
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