第8話

〈喧嘩の記憶〉

「うぇぇぇぇん!」

「え!?」

病室に行くと、泣いている女の子がいた。

「ど、どうしたの?」

「分かんない。でも、なんだか悲しくて……私は、悲しい記憶なんだ…うぇぇぇぇん!」

「ひとまず、欠片を探そう。」

「イヤ!私は居ない方が良いんだ、だから欠片を探さなくて良い!」

「でも……」

「どんな記憶でも、私は大切だと思うよ。」

「悲しくても?」

「悲しくても。」

「………そっか……。」

「うん!一緒に探そ!」

「あ……えっと……これ…」

女の子は箱を渡した。

「これは?」

「欠片が入ってる気がする。私じゃ開けれないから、開けて。」

「りょーかい!」


箱はルービックキューブの形をしていた。入院中に教えて貰ったんだ。…だれに………だったっけ…。



「出来た!開いた!記憶の欠片だ!」

女の子に渡すと欠片は消えた。

「…思い出した…私は『喧嘩の記憶』だ。やっぱり…居ないほうが……」

「そんなことないよ!」

「でも……」

今まで黙っていた少年が口を開いた。

「僕は、喧嘩しても、仲直りして、もっと仲良くなれた子がいたんだ。だから、とても大切な記憶だと思うよ。」

「……そうなの?」

「うん。」

「……そっか。ありがと。私帰るね。」

「ちょっと待って、聞きたい。記憶のこと。」

「……うん。良いよ。『あの子』の1番の友達の『彼』がね、転院することになったんだ。でも、『彼』は『あの子』に言ってなくて……たまたま聞いた『あの子』が怒っちゃって……。ここまでだよ。」

「……そっか。ありがとう。」

「うん。またね。」

女の子は消えた。

「またね。」


確信した。だから、聞く。

「ねぇ、私は、『あの子』なの?」

「………」

少年は黙ったままだ。

「質問を変えるよ。君は『彼』なの?」

「っ…!」

少年は驚いた顔をしていた。

「……やっぱり。」

「……」

少年は、下を向いた。

「どうして何も言ってくれないの!?どうして言ってくれなかったの!?」

「……」

少女の目には涙が浮かんでいた。

それでも少年は黙ったままだ。

「何か……言ってよ……。」

「……ごめん……。」

「………信用、できないよ……一人で、探しに行くね。さよなら。」

少女は去っていった。

「あ……っ………」

少年は下を向いた。

「……ごめん……言えないんだ……正解だよ……」

少年は、一人、泣いていた。

「言えたら……良かったのに……」


・・・


「どうして言ってくれなかったの!?」

「……」

「ねぇ……私達、友達…だよね……。」

「……ごめん……」

「1人にさせて。」

「あ……っ………」

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