第6話
〈祭りの記憶〉
「わぁ、お祭りだ!」
「お祭りに関する記憶があるんだね。」
「遊んでも良い?」
「良いけど、記憶の欠片を優先してね。」
「うん!」
すると、屋台の裏から着物を着た女性が出てきた。
「こんばんは。」
「こんばんは。」
「こんばんは。」
「記憶の欠片探し、手伝ってくれるの?」
「うん。」
「頼むわね。」
私は射的の屋台に直行した。
これは遊んでるんじゃなくて探してるの!ほら、景品の中にあるかもしれないしね。
射的で景品を狙う。あまり当たらない。何故か屋台の中に入れないから、あるだけの弾しか撃てない。
「あ、もうちょっと右……ここかな?それ!」
カコン。と音が鳴り、景品が落ちた。
「やった!」
すると、不思議なことに落ちた景品は少女の手元にあった。
「ええ!?いつの間に!」
景品は箱だった。でも、鍵が掛かっている。
「鍵も探そうっと。」
次に少女はヨーヨー釣りをした。ヨーヨーは2個も取れた。少女は喜び、少年に走って渡しに行った。
「はい!これ!」
「ありがとう!」
少年も喜び、ヨーヨーで遊び始めた。
少女は金魚掬いの屋台に行った。ポイを使い、金魚を掬って水の入ったお皿に入れる。ポイは全部で8枚。少女は欲張り、全部の金魚を掬おうと思った。
1枚目、金魚は掬えずポイはすぐに破れてしまった。
2枚目、金魚を1匹掬い、お皿に入れた。2匹目を掬おうとしたが、非情にもポイは破れてしまった。
3枚目を手に取ろうとしたとき、後ろから声がした。
「あまり掬えないの?」
着物を着た女性だ。
「うん。全部取りたいんだけど……」
「コツがあるのよ。」
「コツ?」
「えっとね、これを―――」
ポイの裏側を上にして、斜めに入れ、掬う時も同じようにする。金魚の頭の方から狙い、素早く掬う。次はポイの表側を上にして同じことを繰り返す。
「どう?やってご覧。」
「ありがと!」
3枚目、コツを意識してやる。すると、一気に4匹掬った。
4枚目、5枚目、6枚目と順調にいき、最後の1匹となった。最後の1匹が1番大きい金魚だ。
7枚目。残念なことに金魚の尾で破られてしまった。
8枚目。金魚の尾をポイから外し、素早く掬い、素早くお皿に入れる。
「やっったぁ!」
見事、少女は全部の金魚を掬うことが出来た。
すると、金魚掬いの水が抜けた。
「あ…何かある。これは…鍵だ!」
箱の鍵だった。少女は箱の鍵を開けた。
「開いた!あ、記憶の欠片見っけ!」
記憶の欠片を女性に渡すと、記憶の欠片は消えた。
「思い出したわ。私は『お祭りと髪飾り』の記憶だったのね。」
女性は続ける。
「『あの子』と『彼』が病院で外出許可を貰って一緒にお祭りで遊んでて、すごく幸せそうだったの。そして、髪飾りを『彼』が『あの子』にプレゼントしたわ。猫がついてるヘアピンをね。」
「それって、こんなの?」
私が、ずっと考えていたこと。もしかして私は――
「ええ。似てるわ。」
「そっか。」
「私はとても大切な記憶だから、早く『あの子』のところに帰らないと。ありがとうね。」
そう言うと、女性は消えた。
「ねぇ…もしかして私って――『あの子』なの?」
「……」
彼は、何も言わなかった。ただ、うつむいていた――。
・・・
「今日は楽しかったね!」
「そうだね、たくさん遊んだね。」
「……」
「どうしたの?」
「ずっと、遊んでいたいなぁ……」
「……そうだね。でも、戻らないと。」
「ふ……うう……くぅ……」
「泣かないで、――ちゃん。あ、そうだ!」
「…ん…?」
「はい!これ!」
「え……かわいい…猫ちゃんだ…」
「プレゼントだよ!」
「っ……嬉しい。……ありがと!――君!」
「どういたしまして。」
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