第3話

〈恐怖の記憶〉

「この建物って病院だったんだね……暗くて…怖い…。」

「大丈夫だよ。僕がついてる。」

「うん…。」

暗闇の方…いや、廊下の方から男の人が出てきた。

「ヒィ!?」

「ああ!ごめん!怖がらせるつもりはなかったんだよ!」

「おじさんは…お医者さん?」

「うん。お医者さんだよ。おじさんじゃなくてお兄さんって呼んで欲しかったなぁ。」

お医者さんは、はにかんだ。

「お医者さんも記憶の欠片を探してるの?」

「そうなんだよ。でも、なかなか見つからなくてね。」

「一緒に探してあげる!」

「本当かい!ありがとう!じゃあ僕はこっちの方を探すから、君たちはここらへんをお願い。」

「分かった!」

私は怖いことを忘れて欠片探しを始めた。


うーん。なかなか見つからない。まだ探してないところ……あ、椅子の下がまだだった。……あった。これは?お金?500円玉だね。使えるところは、自動販売機だけだね。でも私、喉乾いてないし……

「お医者さん!」

「?呼んだ?」

「飲みたい物ある?」

「緑茶かな。」

「はーい。」

お金を入れて、緑茶のボタンを、ポチッ。あれ?緑茶じゃない。あ!

「記憶の欠片見っけ!」

記憶の欠片をお医者さんに渡すと記憶の欠片は消えた。

「思い出したよ。僕は『怖い病院と注射』の記憶だったんだ。」

「注射…怖いよね。」

「『あの子』は毎回泣いて、泣いて……怖いって言うのも、よくわかるよ。僕はきっと、『あの子』にとっていらない記憶なんだろうね。」

「……そんなこと、ない、と思う。怖くても、1回でも乗り越えたって記憶があれば、少しは楽だから。いらない記憶じゃないよ。終わるのはあっさりだし。」

「そうか…『あの子』にも、そう言ってもらえると嬉しいな。それじゃあ、僕は行くよ。」

そう言うと、お医者さんは消えた。


「…早くここから出よう。」

「どうして?」

「お化けが出てきたらどうするのさ!」

「はは…出ないよ。………多分。」

「もう!多分って言わないでよ!」

「ごめんって。それじゃあ、次はあそこかな。」

私達はまた歩き始めた。やっぱり暗いところは怖いよ!


・・・


「え!注射!?嫌だ!嫌だ!」

「少しだけ我慢して、ね?」

「うう…でも怖いよ…」

「大丈夫だよ。目を瞑ってごらん。」

「ん……」

「はい。終わったよー。」

「え!?もう!?」

「うん。はい、これ。よくできましたシールだよ。」

「あ…ありがとう!」


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