第6話 思い出

「にゃ〜お」


 聞き覚えのある鳴き声が俺を夢から醒めさせた。頬を舐められているようなくすぐったい感覚がニ度寝をしようとする俺を遮る。


「なんだよさくらぁ、くすぐったいからやめてくれよぉ…」


 ずっと頬を舐め続けるさくらの頭を撫でていると俺はどこか違和感を覚えた。

 それは異様に小さく、ふさふさの毛で包まれていた。本来それが当たり前なのだろうが、今はそうではなかった。

 慌てて目を開けて彼女の姿を確認すると、昨日までとは違う、いつも見ていたネコの姿に変わっていた。


「さく…ら…だよな?」

「にゃ〜」


 特に意味もなく顔や胴体を触っていると、さくらは急に身体を震わせてから手を引っ掻いてきた。

 

「いててて…なにすんだよさくら…」


 この時、女の子だから無闇に身体を触るなとさくらに言われたことを思い出した。

 テーブルに目をやると、昨日食べた弁当の箱が2つ並んでいたままだった。

 やっぱり夢じゃなかったんだ。

 じっと彼女の顔を見つめて今まであったことを思い出した。

 二人で一緒に食卓を囲んで、二人で話をして、二人ででかけたこと。些細なことだったかもしれないが、俺からしたら全てとても大切な思い出だ。


「ありがとな、さくら」

「にゃ〜お」

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