第10話 痩せた少年

「うっ…ぐすっ…」


 外と遮断されたカプセルの中で眠っている少年の姿を見て、涙が止まらなくなった。細く、それでも大きな少年。

 私はその子を救うことができなかった。

 そんな私の様子を見るためか、白衣を着た男が一人やって来た。


「息子さん、残念でしたねぇ」

「ふざけるな…!自分たちの研究のために私の子どもを使ったくせに!」

「……私たちが使っていなければ、彼はとっくの昔に死んでいたはずですよ」


 返す言葉が見つからなかった。自分の中でその答えに納得してしまったからだ。間違ってはいなかったのだ。

 男はため息をついて背を向けた。


「——神など存在しないのですよ。人は定められた運命から逃れることはできない。例え科学の力を使ってもね」

「…AIによるシュミレーション。神の真似事でもしていたつもりなのか」


 その研究をより確実にするために、人の子である奈月を使ったというのか…!


「その通りです。神は存在しない——だからこそ、私たちは神に少しでも近しい存在になるべく研究をしている。ただ、それだけのことですよ」

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