第2話 手紙とぬいぐるみと

リディアがエンブレイズと踊った翌日から、彼女の周りの空気は明らかに変わり始めた。舞踏会での注目を浴びたあの日、彼女は一夜にして王宮の話題の中心に立たされていた。しかし、その注目は必ずしも好意的なものではなかった。


リディアが廊下を歩くと、侍女たちや貴族の婦人たちのひそひそ話が、まるで耳元でささやかれるように聞こえてきた。彼女が近づくと、彼女に対して気まずい笑顔を浮かべて会話を途切れさせる者もいれば、あからさまに冷たい視線を送る者もいた。


ある日、リディアが庭で一人で歩いていると、背後から聞こえてきた陰口が、彼女の心に深く突き刺さった。


「見た?昨日の舞踏会でリディア王女がエンブレイズ殿下と踊っていたわよ。あんな地味な子がどうして…」


「本当にね。あの控えめな顔で何を考えているのかしら?殿下を誘惑するつもりかしら。」


「私たちの誰もが彼に相応しいというのに、どうして彼女なんかが選ばれるの?理解できないわ!」


「見た目もそうだけど、リディア王女なんて何の魅力もないじゃない。姉たちと比べても、全然見劣りするわ。」


「確かに、あんな地味な存在がエンブレイズ殿下の隣に立つなんて、まるで場違いよ。まさか、裏で何か手を使ったんじゃないかしら?」


リディアは、彼女たちが自分の存在に気づかないまま、噂を続けていることに気づいた。声が低く、冷笑が混じった言葉が、まるで毒のように彼女の心を蝕んでいく。背筋が凍るような感覚に襲われながらも、リディアは必死にその場を去ろうとしたが、足が重く、体が硬直して動けなかった。


「でも、考えてみて。彼女が何か弱みでも握っているのかもしれないわ。王女の地位を使って、殿下を手中に収めようとしているんじゃないかしら?」


「それにしても、彼女が何を持っているというの?彼女の姉たちは美しさでも才能でも、遥かに上よ。リディア王女は、ただの飾り物に過ぎないわ。」


リディアの胸に湧き上がった怒りと悲しみが、涙となってこぼれ落ちそうになった。しかし、彼女はその感情を必死に抑え、唇を噛み締めて涙を堪えた。背後から聞こえる嘲笑と冷たい声が、彼女を追い詰め、彼女の心を無情に削り取っていく。


「エンブレイズ殿下が本当にリディア王女を選んだなんて信じられない。あんな無個性な女が、どうして彼の目に留まるのかしら?」


「まぁ、でも、彼女はすぐに見放されるわ。殿下はきっと彼女のつまらなさに気づくでしょう。時間の問題よ。」


リディアはその場に立ち尽くし、心の中で自分自身に問いかけた。彼女は本当にエンブレイズの目に留まる価値があるのか、彼が見たという「特別な美しさ」は本当に存在するのか。彼女の中で、自己疑念が渦巻き、嫉妬に満ちた言葉が彼女をさらに傷つけていった。


彼女はその場を離れようと、震える足でゆっくりと歩き出した。だが、その足取りは重く、心の中の傷がますます深まっていくのを感じた。リディアは初めて、自分がこのような冷酷な世界にいることを痛感し、自分自身がどれだけ無力であるかを思い知らされた。


その日、リディアは自室にこもり、誰にも会いたくないと思った。彼女の心は暗闇に包まれ、嫉妬と憎悪の声が頭の中で繰り返し響いていた。彼女はエンブレイズとの出会いが、こんなにも多くの人々を敵に回すことになるとは夢にも思っていなかった。しかし、彼女はそれでも自分の心に従い、エンブレイズとの関係を続けるべきかどうか、深く考え始めた。


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数日後、リディアの元に届いた一通の手紙は、彼女の心に再び光を灯した。手紙を開く前から、その整った筆跡と優雅な封蝋が、送り主が誰であるかを物語っていた。彼女の胸が高鳴り、手が少し震えたが、静かな決意を胸に秘めて封を開けた。


手紙には、エンブレイズ・ハーベン・シュバルト殿下からの優しい言葉が綴られていた。


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**リディア王女殿下へ**


舞踏会でのひとときを共に過ごせたこと、心から感謝しています。あなたの穏やかな微笑みと、優雅な振る舞いが、私の心に深く残っています。あの日の踊りが、私たち二人の間に新たな絆を結んだことを願っています。


もし、よろしければ、数日後に私の国で昼食を共にしませんか?私はリディア殿下とのさらなる親交を深めたいと心から願っております。この昼食の場を通じて、あなたともっとお話しできることを楽しみにしています。


場所は我が国の領土内にある城館、静かで美しい庭園に囲まれた場所を選びました。リディア殿下が安心して訪れることができるよう、最善の準備を整えますので、どうか安心してお越しください。


あなたの訪問が私にとってどれほど喜ばしいことか、言葉にするのは難しいですが、この機会を通じて、私たちの絆がさらに深まることを心より期待しています。


どうか、このささやかな招待を受け入れてくださいますようお願い申し上げます。


エンブレイズ・ハーベン・シュバルト


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手紙を読み終えたリディアの心には、喜びと希望が入り混じっていた。エンブレイズの優しさと誠実さが、手紙を通じて彼女の心に伝わってきた。陰口や嫉妬に囲まれる日々の中で、この手紙は彼女にとって救いとなった。


リディアはこの機会を決して逃したくないと感じた。エンブレイズと再び会い、彼との関係をさらに深めることが、今の彼女にとって最も大切なことだと確信していた。そして、彼女の中で一つのアイデアが生まれた。彼に贈るための特別な贈り物を用意しようと。


彼女は、自分の趣味である人形作りの技術を活かし、エンブレイズのためにクマのぬいぐるみを作ることに決めた。彼が子供の頃に愛用していたというぬいぐるみに似せて、彼女は心を込めて針と糸を走らせた。


ぬいぐるみは、彼女の手の中で徐々に形を成していき、その過程で彼女の心も少しずつ癒されていくのを感じた。クマのぬいぐるみには、彼女の想いがすべて込められていた。エンブレイズへの感謝、友情、そして彼との絆を深めたいという強い願いが、針先から紡ぎ出されていった。


完成したクマのぬいぐるみは、柔らかくて愛らしく、リディアの手から生まれた真心の象徴だった。彼女はそれを大切に包み、エンブレイズとの再会を待ちわびながら、心を整えた。


手紙の内容は、リディアにとって新たな一歩を踏み出すための勇気を与えてくれた。彼女はエンブレイズとの昼食の機会を、二人の絆を深めるための大切な時間にしようと心に決めていた。


リディアは静かに馬車の中に身を沈め、手に抱えたクマのぬいぐるみをしっかりと胸に押し当てた。馬車がゆっくりと敵国の領土へと向かう中、窓の外の風景が次第に変わっていく。緑豊かな草原が広がり、遠くには高い山々が見える。だが、リディアの心はその美しい景色を楽しむ余裕はなかった。


ぬいぐるみの柔らかな感触が、彼女の心を少しだけ安らげてくれたが、その一方で、不安が胸の奥底で渦巻いていた。エンブレイズ殿下がこのぬいぐるみを喜んで受け取ってくれるのだろうか。彼はこれを見て微笑んでくれるのだろうか。それとも、これは彼にとって子供じみた贈り物としか思えないのだろうか。


リディアの手は、無意識のうちにぬいぐるみの耳を撫でていた。彼女はこれを作る過程で、どれほどの時間と心を費やしたかを思い出していた。エンブレイズへの感謝と友情を形にするために、彼女は針と糸を駆使して一針一針、丁寧に縫い上げた。その過程で、彼女の不安や期待も一緒に織り込まれていた。


しかし、今、その全てが無駄になるかもしれないという恐れが、彼女を圧し潰しそうだった。


「彼がこのぬいぐるみを見て、どう思うだろう?」リディアは心の中で何度も自問した。彼女は敵国に向かうという状況の中で、この贈り物が適切なのかどうか、今さらながら疑問に感じ始めた。


「もし彼が笑ってしまったら…?もし彼が受け取ることを拒んだら…?」そう考えると、リディアの胸は痛みでいっぱいになり、涙がこみ上げてきた。彼女は何度も深呼吸をして、心を落ち着けようとしたが、不安は消え去るどころか、ますます強くなっていくようだった。


彼女はぬいぐるみをもっと強く抱きしめ、目を閉じた。馬車の揺れに合わせて、彼女の心も揺れ動いていた。彼女はこの贈り物が、エンブレイズとの間にさらなる絆を築くきっかけとなることを願っていたが、それが叶わなかった場合のことを考えると、恐れが止まらなかった。


「でも、これは私の真心。彼が私を理解してくれるなら、きっと…」リディアは自分を励まそうとしたが、その声は小さく、かすかなものだった。彼女の不安は、彼女の心に影を落とし続けた。


馬車は敵国の領土に入った。リディアの心臓はそのことを感じ取って、さらに速く鼓動を打ち始めた。彼女はぬいぐるみをそっと撫で、もう一度自分に言い聞かせた。「これが彼との絆を深める第一歩でありますように」と。


しかし、その祈りが現実になるのかどうか、リディアにはまだ確信が持てなかった。馬車の中で一人、彼女はぬいぐるみを抱きしめ、心の中で様々な思いを巡らせながら、これからの出会いに不安と希望の入り混じった感情を抱いていた。


馬車が静かに止まり、リディアは敵国の城門の前に立っていた。壮大な城の佇まいに圧倒されながらも、彼女は深呼吸をして自分を落ち着けようとした。手にしっかりと抱えているクマのぬいぐるみが、彼女にかすかな安心感を与えてくれたが、それでも心臓の鼓動は速まっていた。


門がゆっくりと開かれ、リディアは城の中へと案内された。豪華な廊下を歩く間、彼女はエンブレイズとの再会に向けて、自分を奮い立たせていた。数日前に受け取った彼からの手紙を思い出し、彼の優しい言葉に心を落ち着かせようと努めたが、それでも不安は消え去らなかった。


そして、ついに大広間の扉が開かれ、彼女はエンブレイズが待つ部屋へと足を踏み入れた。彼は彼女を迎えるために立ち上がり、その鋭い目が彼女に向けられた。エンブレイズの存在感は圧倒的で、彼の背の高さや整った顔立ちが、リディアをさらに緊張させた。


「リディア殿下、お越しいただきありがとうございます。」エンブレイズは穏やかな声で言い、軽く頭を下げた。その声には礼儀正しさと、どこか親しみが感じられた。


「こちらこそ、エンブレイズ殿下、お招きいただきありがとうございます。」リディアは少し緊張した声で答えた。彼女は彼の優雅な態度に少し気後れしつつも、心を奮い立たせた。そして、彼の前に立ち、手に持っていたぬいぐるみをそっと差し出した。


「実は…殿下のために、これを作ってまいりました。」リディアの声は少し震えていたが、その目には真剣な想いが宿っていた。彼女は勇気を出してぬいぐるみをエンブレイズの手に託した。


エンブレイズは一瞬、驚いたように目を見開いたが、その表情はすぐに穏やかさを取り戻した。彼は無言のまま、リディアが差し出したぬいぐるみを受け取った。彼の手がぬいぐるみの柔らかな表面に触れると、彼は一瞬だけ、その感触を確かめるように指を動かした。


リディアは、エンブレイズがどのように感じているのかを知りたかったが、彼の表情からは何も読み取れなかった。彼は礼儀正しく微笑んでいるが、その奥にある感情を見せることはなかった。彼が喜んでいるのか、それとも困惑しているのか、リディアにはわからなかった。


しかし、エンブレイズの心の中では、微かな喜びが芽生えていた。彼は、この小さな贈り物に込められたリディアの真心を感じ取っていた。戦場で多くの困難を乗り越えてきた彼にとって、このような純粋な贈り物を受け取るのは久しぶりのことだった。それは彼の心に温かさをもたらし、どこか懐かしい感情を呼び覚ました。


だが、エンブレイズはその喜びを表に出さないように努めた。彼は王族としての冷静さと威厳を保つことを常に心掛けていた。だからこそ、彼の顔には微笑みが浮かんでいるだけで、その裏に隠された感情をリディアに見せることはなかった。


「これは…非常に精巧に作られていますね。」エンブレイズはぬいぐるみを見つめながら、穏やかに言った。「リディア殿下がこれをお作りになったとは驚きです。」


リディアは彼の言葉にほっとしたが、まだ心の中に不安が残っていた。「気に入っていただけたでしょうか…?」彼女は少しおずおずと尋ねた。


エンブレイズはその問いかけに対して、もう一度微笑んだ。「もちろんです。リディア殿下が私のためにこれを作ってくださったこと、非常に感謝しています。」


その言葉に、リディアの心は少しだけ軽くなった。彼の言葉が本心であることを願いつつ、彼女は自分がしたことが無意味でなかったことに安堵した。そして、エンブレイズがぬいぐるみを大切に扱ってくれることを期待し、彼との絆がさらに深まることを願った。


エンブレイズはその後もぬいぐるみをしばらく見つめ、まるでその意味を噛みしめるようにしていた。彼はリディアの心を感じ取り、その贈り物が単なる物質的なもの以上の意味を持つことを理解していた。


そして、彼の心の中で、リディアへの感謝と興味が少しずつ育まれていくのを感じた。


エンブレイズはリディアと共に用意された広間へと足を運び、豪華な食事の席に着くと、彼は何気ない一言をお付きの者に告げた。「このぬいぐるみのために、特別に椅子を用意してほしい」と。リディアはその言葉に驚きながらも、エンブレイズの心遣いに心が温かくなった。まさか、彼がぬいぐるみのために椅子を準備するとは思ってもみなかったからだ。


しばらくして、お付きの者が小さな椅子を持って戻ってきた。その椅子は、通常の人間用のものとは違い、ぬいぐるみにぴったりのサイズだった。丁寧に作り込まれた椅子には、柔らかそうなクッションが置かれており、その上にエンブレイズは、リディアが手渡したクマのぬいぐるみをそっと座らせた。


ぬいぐるみは、その小さな体を椅子に預けて、テーブルの端からちょこんと顔を覗かせていた。その姿はなんとも愛らしく、まるで食事に参加しているかのようだった。リディアはその様子を見て、胸の奥がじんわりと暖かくなるのを感じた。彼女が心を込めて作ったぬいぐるみが、エンブレイズによってこうして大切に扱われていることが、何よりも嬉しかった。


食卓に並ぶ豪華な料理の間で、ぬいぐるみが小さな顔を見せている光景は、どこかほほえましく、微笑ましいものだった。エンブレイズもまた、その可愛らしい姿に目を向け、優しい表情を浮かべていた。彼はぬいぐるみの存在を軽んじることなく、むしろそれをリディアへの尊重の証として扱っていたのだ。


リディアはふと、エンブレイズのその行動が、彼の内面にある優しさと繊細さを物語っていることに気づいた。彼はただの冷徹な戦士ではなく、他人の心に寄り添うことができる人物なのだと感じた。そのことが、彼女の心にさらなる感銘を与えた。


ぬいぐるみが椅子にちょこんと座り、テーブルから顔を出しているその姿は、リディアにとって特別な意味を持っていた。彼女はぬいぐるみを作る際に込めた思いが、エンブレイズによって大切にされていることに感謝し、彼との距離が少しずつ縮まっていくのを感じた。


食事が進む中、リディアとエンブレイズの間に、柔らかで温かい空気が流れていた。ぬいぐるみの小さな存在が、二人の会話にささやかな笑いと安らぎをもたらしてくれた。ぬいぐるみがテーブルの上でちょこんと座っているその光景は、リディアにとって何よりも心地よいものであり、彼女の不安を和らげる役割を果たしていた。


エンブレイズは食事の合間に、ぬいぐるみの頭を軽く撫でてみせることさえあった。その仕草には、彼の内に秘めた温かさが感じられ、リディアはますます彼の魅力に引き込まれていった。ぬいぐるみを大切に扱う彼の姿勢が、彼の誠実さと優しさを証明しているように思えた。


その夜、リディアはエンブレイズとの会話を楽しみながら、ぬいぐるみが二人の間に静かに存在していることに心を満たされていた。ぬいぐるみの愛らしい姿が、彼女の心に安らぎをもたらし、エンブレイズとの新たな絆を感じさせてくれた。


そのとき、大広間の扉が勢いよく開き、エンブレイズの姉である第一王女が堂々とした足取りで入ってきた。彼女は背が高く、目力の強い表情で周囲を見回しながら、豪胆なオーラを放っていた。彼女の存在感は圧倒的で、どこか男性的な魅力さえ感じさせるものがあった。


「おや、弟よ。こんなところで何をしているのかと思ったら、随分かわいらしいものを連れているじゃないか。」第一王女は、ぬいぐるみを見つけて目を細め、皮肉っぽい微笑を浮かべた。「そのぬいぐるみ、私への献上品かしら?」


その言葉に、リディアは驚きと不安を感じたが、エンブレイズは冷静に応対した。「姉上、それはリディア様から『私が』頂いたものです。」彼はぬいぐるみをそっと撫でながら、リディアへの敬意を込めて言葉を続けた。「これは彼女が心を込めて作ってくださったもので、私にとって大切な贈り物です。」


第一王女は少しだけ眉をひそめ、興味深そうにエンブレイズとリディアを交互に見つめた。「ほう、リディア様からの贈り物ね。それはまた珍しいこと。あなたが何かを受け取るなんて、あまり聞かないことだわ。」


エンブレイズは微笑を浮かべ、ぬいぐるみをそっとテーブルに戻した。「姉上、それはあなたの思い込みです。リディア様が作ってくださったこのぬいぐるみは、私にとって特別な意味を持っています。」


第一王女は少しだけ口角を上げ、興味深げにリディアに目を向けた。「なるほど、そういうことか。リディア様、あなたはなかなか面白い方のようね。弟があなたのような方から贈り物を受け取るなんて、私も見直さなければならないかもしれないわ。」


リディアは少し緊張しながらも、王女の言葉に頭を下げた。「ありがとうございます。私はただ、エンブレイズ殿下に喜んでいただければと思って…」


「ふふ、まあ、あなたが弟に贈り物をすることに異論はないわ。」第一王女は軽く笑いながら、リディアを見つめた。「でも、もし次に何か贈り物をするときは、私にも忘れずにね。豪胆な性格のせいで、私には贈り物なんて滅多に届かないのだから。」


その言葉には冗談のような軽さがあったが、どこか一抹の寂しさも感じられた。エンブレイズはそのことに気づき、少し柔らかい表情で姉を見つめた。


「姉上が望むなら、私がリディア様にお願いして、もう一つ作っていただくことも可能でしょう。」エンブレイズは穏やかに言い、リディアに微笑んだ。


「ええ、それなら喜んで。」リディアも笑顔で答えた。


第一王女は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにまた豪胆な笑みを浮かべた。「まったく、弟もなかなか洒落たことを言うようになったじゃないか。でも、気にしないでリディア様。私はただの冗談を言っただけよ。」


その後、第一王女はまた強い足取りで部屋を出ていったが、背中には少しだけ柔らかさが見えた。

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勇敢な彼とぬいぐるみの奇跡 芸州天邪鬼久時 @koma2masao

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