短編小説集

エス

ブルーライト

 深夜1時。時計の秒針がカチカチと煩く動いている。周りが何も見えない暗い部屋の中、小さな画面から映し出されるブルーライトが僕の目を照らしていた。

 この光でできた糸だけが僕をまっすぐ見てくれている。それがどんなに頼りないくらい弱く汚い光だったとしても、現実リアルよりもすごくすごく明るく綺麗に感じてしまったから。


 現実リアルはまるで永遠と刃物を突きつけられているようで。失敗のひとつも許されない。醜くて、真っ暗闇に放り出されたみたいだ。


 だから僕は明かりネットを求めた。それは街灯に群がる蛾のように。月明かりと勘違いして、永遠に月明かりへ辿り着けずに、目先の明かりだけを頼って生きていくことしかできない存在。


 一生このままだったとしても、そこが幸せなのであれば僕はそれでいい。例えそこが地獄であっても、他に光がなければどうしようもない。


 だから今日も、僕はブルーライトを浴びた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

短編小説集 エス @_escape_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る