BONUS-TRACK:3 星に願いを
【シチュエーション:旅も後半に差し掛かり、二人はケワシー山で野営をすることに。並んで見上げた星空に、ふと一条の光が流れて――】
【主人公とヒロインが並んで座っている/位置は右/距離近め】
(SE:右奥=ヒロインの向こう側で、焚火の薪がパチパチと弾ける音)
(SE:遠くに聞こえる鳥や獣の鳴き声)
「んく、んく……ふぅ。スープがとてもあったかいです」
「惜しむらくは、キラーベアーと怪鳥ガルーダのお肉でないことでしょうか。ふふっ♪」
「薪になりそうな枝を探していた時、以前に勇者様が使われたお鍋を見つけたのは驚きましたね。中身は動物たちに食べられてしまっていたようですけれど」
「動物ってすごいですよね。人間では耐えられない毒キノコも平気で食べちゃうんですから」
「……ふふっ、ごめんなさい。勇者様のお顔がだんだんと気まずそうになっていくのが、かわいくて。つい、からかってしまいました」
「でも。鍋が残っているくらい、ここは人の立ち入らない秘境なんですよね」
「本当に、星が綺麗……」
「手が届きそうなくらい近くて、眩しくて……」
「連れてきてくださってありがごうございます。それと……旅の順路のことも」
「わたくしが天幕での野営に慣れてから山に入れるよう、慮ってくださったのですよね?」
「ええ、気付いていましたよ。だって、あの部屋で勇者様から聞いていたお話どおりなら、この山を経てから船旅に入り、マグマケイノへと行くはずですから」
「毎夜毎夜、勇者様のお話を思い返しながら、次はどこだろうって」
「なんだか本を逆から読んでいるような、不思議な面白さがありました。えへへっ」
「残りは……勇者様が盗賊団を倒した村と、キングスライムを倒した村ですね」
「変な言い方になりますが、わたくし、勇者様が果敢に戦った痕跡を見るのが好きなんです」
「勇者様の勇姿を思い描く度に、そんな死闘があったからこそ、今の平和があるのだと。改めて実感するのです」
「改めて、あなた様が生きていてくださって良かったと、心から思うんです」
(SE:頭を撫でる音)
「ありがとう……ござい、ます……」
「えっ、空を? ――ああっ、流れ星!」
「勇者様はご存知ですか? 流れ星に三回願いをかけると、その願いが叶うという言い伝え」
「わたくし? はい、しましたよ。願いごとを、二つ」
「えへへ、欲張りでしょう? ですが、どうしても譲れなかったのです」
「まずは聖女として、この先も平和が続くことを願いました」
「そしてもう一つは――」
(SE:ヒロインが距離を詰めてくる音)
(SE:静寂。焚火の音を強調)
(SE:ヒロインが深呼吸をする音)
「勇者様とこれからも一緒にいられますようにという、わたくし自身の願いです」
「勇者様」
(柔らかくキス。音は立てず、吐息の音のみ)
「……ふふっ、勇者様のお顔が真っ赤ですね」
「はい、わたくしもです」
「ねえ、勇者様?」
「ここは秘境ですから、誰も来ることはありません。動物たちも、焚火の火を避けてくれています」
「今なら、お星さましか見ていませんよ」
「だから――もう一つだけ、願いごとをしてもいいですか?」
(キス。先ほどのよりも確かに押し当てる)
「お慕い申し上げております、勇者様」
『甘々清楚な聖女様が献身的に癒してくれる極上リスポーン・タイム』
BONUS-TRACK(完)
甘々清楚な聖女様が献身的に癒してくれる極上リスポーン・タイム 雨愁軒経 @h_hihumi
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