不幸な花火、見えた
ひなもんじゃ
不幸な花火、見えた
僕の幼馴染で遠戚の鵜飼は、幼いときは私と同じ福岡県北九州市門司に住んでいたが、小学校卒業くらいのときからに県の反対側の久留米市に引っ越してしまった。
普通、田舎は親戚の集まりというものがあり、もちろん盆には帰ってくる。でも鵜飼の場合、遠戚にあたるのであまり親族という感じではなく、本当にそれ以後に会うことはなかった。とはいえ彼女とはゲームの傾向が昔から同じだったので、連絡手段だけがなぜか確保されて、いつしか高校生に登る頃から「インターネット、とりわけツイッターのフォロワーの一人」みたいな関係性を延々と繰り返していた。
そういう関係性を続けていると不思議なもので、当時鵜飼が一体どんな顔をしていて、小学生だったときは具体的にどういったことを話していたのかもう全く見当もつかないのに、現在どういうものが好きなのかとかの波長、そして声だけはなぜかくっきりと覚えているのだ。
そのころ、高校生の僕はというと、長年やっていた、学校の関係性から派生した陸上部やら、鉄道撮影趣味にも飽き飽きし、気分転換にやっていたサブカルの考察の活動がわりと当たって、インターネットで自分から独り歩きして鬱屈なルサンチマンを解消していた最中だった。
鵜飼はそんな僕をみて、「よくわからない、だだをこねて写真を撮ったり、惰性で目標なく陸上やるよりよっぽどいいよ。だって人間関係って流動するものでしょ」
そうメッセージで話す。僕は通話を繋ぎながら「そういうものなのかなぁ」と言って沈黙してしまった。
鵜飼は相変わらずゲームが強い。新作のキャラクター対戦ゲームであっさりと負けてしまい、コントローラーを放してもう、圧倒的な差をつけられているんだなぁと感じながら対戦終了のボタンを押す。
鵜飼はどう?ときくと、ああ……といって急に笑い、
「最近はだめ。全然ダメ。勉強も追いつかないし、クラスでも浮いてるし。でも最近いいことあったよ。陸上で県総体出る」
「県総体?すごいじゃん、頑張った……おめでとう」
「そう。ゲームでも陸上でも負けず嫌いだから。今年は最後だと思ってやる」
でもコソ錬しないといけなくなるから浮上率減るのかな。
そう思って僕はtwitterのTLをみた。僕にとってはTLは何のことはない現実と陸続きのもので、鵜飼との関係性のみが宙に浮いていた。
「今年の県総体さ、北九州のメディアドームでやるから多分こっち来るよ。もし時間あったらそっちいく」
「県総体って…その日たしか8/13だよね?関門花火か。家で見に来る?」
「……うん」
今年の県総体も、久留米市の運動場で行われた。
不幸な花火、見えた ひなもんじゃ @hinamonzya
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