第3話 真夜中の森へ
ゴーン……ゴーン……ゴーン……
学校の時計台が、午前零時の鐘を鳴らす。ゆっくり、低く、闇夜を突き抜けるように響く。
少年達は、その音を合図に、そっと足を忍ばせ部屋を出た。
月明かりに照らされ、その姿が他の生徒や教師に見つからない様に、四人は息をひそめ、足音を忍ばせ、隠れながら校内を駆け抜ける。
森の入り口まで来ると、辺りを見まわし誰もいないことを確認し、ホッと息を吐いた。それも束の間。早々に四人は森へと足を向けた。
「それにしても、グレンが入学直後にカイルの森へ行っていなかったなんて、意外だよ」
先頭を行くヒューイが、サクサク歩きながら言う。
彼は四人の中で一番背が高い。ヒョロリとした体型の長い脚が一歩足を進めると、キノ達は二歩早く足を動かす。
普段はキノ達に足並みを揃えてゆっくり歩くヒューイだが、興味深い何かがあると、途端に早歩きになるのだ。といっても、ヒューイにとっては普通に歩いているだけなのだが。
「僕は、多くの人間がする事に、たいして興味が無いだけさ。人が興味を示さない、または挑戦しようとしない事には、興味があるけどね。何人も行くなら、僕が行く必要もない。そう思っただけさ」
「でも、魔女祭りには興味があるんだね」
笑みを浮かべたヒューイが振り向きながらいえば、グレンは両肩をクイッと軽く持ち上げ、「まぁね」と、戯けた顔をする。
「【魔女祭り】の噂があれだけありながら『カイルの森には何も無い』と知った途端に、誰も興味を示さなくなった。僕は、それがとても気になったのさ。ならば、行ってみる価値がある、とね」
「ちょ、ちょっとぉ、みんなぁ、歩くのが早いよぉ」
振り向けば、ヒューイの次に背が高く、三人よりも横幅がポッチャリした体型のライアンが数歩後ろでゼェハァと息を切らせながら走って……いや、歩いている。
「ライアン、このくらいでバテてたら、魔女祭りが行われる廃墟まで持たないぞ?」
と、グレンがいえば、ヒューイがそれに続く。
「医者から少し痩せろって言われてるんだろ? 運動だよ、運動」
「校内を隠れながら走ったんだ、僕だって頑張ったろ? もう僕らだけだし、もう少しゆっくり……」
弱音を吐くライアンに、キノが言う。
「ライアン、魔女お手製の美味しい何かしらが食べられるかも知れないよ? 早く行かないと無くなるかも」
その言葉に、ヒューイとグレンが目を丸くして見合わせると、ライアンの疲弊し切った顔に煌めきが戻る。
「三人とも! 早く行かないと、美味しいモノが無くなっちゃうよ!」
三人を追い抜きサッサと行くライアンに、三人は笑いながら追いかけたのだった。
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