Episode 4 動き出す鋼のコロッサス

「母さん、父さん!大丈夫か!」

 村の警備隊に保護され、海岸まで後退した人の群れに両親を見つけたルナティア、神狼に乗せたまま、その場でふたりに呼び掛けた

「ルナ!無事か!」

「はい!この先は私に任せて!お二人はみんなとここにじっとしてって!」

「無茶だーー」

 父さんの返事を待たずに、村の正門に集まる小型の魔怪獣たちに向かって銃撃を放たルナティア、自分も戦士であることを言葉より行動で示す方が早い

 三点バーストした紫色のビーム、瞬く間に魔怪獣たちの頭を貫いた

「あなたは...ルナちゃん?」

 守りの陣形を取った兵士たち、驚愕の目で駆け向けたルナティアを見る。普段から見ると結構大人しい娘が今、こんなに戦いに手慣れている

「説明は後だ!君たちが戦線を維持、後ろにいる大将は私に任せろ!侵攻を率いる頭脳さえ倒せば、残りの雑魚は直ぐに逃げるはず!」

「はぁ!」

 見た目は半人前の小娘に過ぎないか、言葉に満ちた威厳は只者ではない、兵士たちを心を震わせ、無意識に服従している

 クリア・バスターの出力をオーバーヒートの限界まで引き上がり、灼熱のビームの奔流が一瞬で数百頭の魔怪獣を灰に消した

 熱と光で伝わる破壊的エネルギー、細胞を分解し、原子さえ壊す

「駆けるぞ!ルース!」

 溶かれた魔怪獣の屍と灰燼の道が開けたと見て、駆けつけるルースに乗って、更にその奥へ飛び込んだルナティア、オーバーヒートさせないように精密に拳銃の出力を制御し、異なる出力で跳びかかる魔怪獣を貫く

 どれもほぼ同種類、熱い殻に守られた犬型、体当たりと噛みつき以外に口からの噴火で攻撃

 不自然だ。確かに元より魔怪獣の存在は自然の摂理に反するが、今度の攻撃 、タイミング的に当たり過ぎる。今夜ーー私が十二歳になった誕生日に、私自身は帝国時代の装備を取り戻すに裏山へ行き、そして丁度このタイミングで魔怪獣が襲い掛かる、到底偶然と思えないほど時間的に被っている

 この時点で...今夜は一体何が起きる?何のきっかけとなる?ーーだめ、心が乱れる。戦いが終わったからまた考えよ

 果てが見えない魔怪獣を倒し続けて獣の海を突破して前へ進むルナティア、その目の前に立ち向かうの剣と盾を握ったリザードン人間みたいな怪人

「こいつが魔怪獣を率いる戦争頭脳ウォーマスター?いや、あんまりそうに見えないがーー戦うしかない!」

 まるで一騎討ちを誘うように、怪人の周りにいる小型魔怪獣たちが散開し、直面するルナティアと怪人の間に円盤のような空き地を残した

「ルース、君はここで待て。」

 騎乗のままだと脚部の動きが鈍い、至近距離での白兵戦では不利。そう思ったルナティアはルースから降りて、素手で応戦。正直、今の自分だとこいつを倒せるかとわからない。だが、自分しか戦えない!

 ミライヴィア、あの時の君もこんな気持ちかーー

 臨戦態勢を構えて、敵の攻撃を待つ。ルナティアは体力少ないため、自分から畳み掛けることが難しい、だから敢えて敵の攻撃を合わせて反撃で大ダメージを与えると判断した

 それに対して、右手に握って剣を掲げて仕掛けた怪人

 まだ時ではない。左側へと身体を傾いて回避するルナティア、怪人の心臓を守る左側の盾が離れるタイミングを待っていた

 更に二連撃、怪人が繰り出した斬撃が重なる、そして真っ向から三連の竪切

「こいつ、戦いに慣れている、ただの野獣じゃない。」

 如何に右手が振るうても、左側の盾は盤石のように動かず

 このままだと相手の隙を見つけ出す前に自分の体力が持たなくなる

「賭け処だなーーいいだろ!」

 三連斬の最後の一撃に対して、両手挟んで白刃取り、そして力振るいで怪人を近寄せーーそのドカゲ頭に向かって頭突き

 突然喰らった頭突きに一時的に方向が乱れたリザードン怪人、その硬直に乗って懐に突っ込んだルナティア、拳銃を心臓の位置に狙って一発発射

 この距離だとガードしても間に合わない、確実に怪人の左胸を貫いた

 血を吐きながら後退した怪人、怒りの咆哮を上げ。しかし、倒れる様子が見えない

「まさか、心臓が二つでもあるとか言わないでくれよ?」

 再び仕掛けて来ない、むしろ更に距離を取って、周りにより多くの魔怪獣を集まり

 怪人を中心に謎の魔法陣が描かれ、叫びと共に、先村へ襲い掛かる数千頭の魔怪獣たちが血潮に変わりて融合、大いなる一つの巨大怪獣に変わり、その身長およそ50メートル以上、赤く火山みたいな殻に守られた二足歩行の爆竜形の怪獣

「ヤバすぎる。こんなの、魔壊騎なくして倒すはずがないーールース!お前は皆に伝わる、村を放棄して今すぐ逃げる!私が時間を稼いてくれるから早く!」

「分かった!姫も無理せずに!」

 ごめん、皆ーー私、ここで死ぬかもしれない。

 元より消えたはずのこの命!罪深きこの私!誰かを守る為にくたばるのならーー本望だ!

「はァァァ!」

 強化された跳躍力で一気に百メートルを高さを跳び超え、空から降りたら爆竜の目を目指して、ダガーフォームの拳銃を刺し込む

 そして怪我した目を蹴ってその反動に乗じて再び跳び上がり、空中で姿勢を立て直して爆竜の脳天に着陸

「脳さえ直接焼けば、終わりだ!」

 足元を狙って拳銃のチャージを開始。銃口に踊る紫のイナズマ、収束しつつ金色の光が今までのない一発を撃てようとしている

 しかし、目がやられたの痛みか、身に立つ侵入者を振り下ろすか、背部の火山が噴火したと共に、爆竜が全身を激しく揺れる

「わぁぁぁーー」

 こんな激しい揺れの中で態勢を保たれず、振れないように鱗を掴んだルナティア

「そこのガキ、さっさと避けろ!後はあたしに任せりゃいい!」

 高いで狂気に満ちたワイルドな女性の声、どこかで聞いた覚えがある声が道隣りの山頂から響いた

「てめぇ、その声ーー!ええい!」

 嫌がる記憶が呼び戻したルナティア=ギルベルト、後のことを大体予測したため速やかに跳び下りた

 次の瞬間、天から降りた光の柱が怪獣を飲み込む、そして後ろに届いた技の詠唱

「後発先制、必殺の大魔法!約束の光ビルレスト・ステリアス・プロメス!!」

 周囲への影響をまったく考えずにド派手の大魔法を好き放題に打ち出し、その狂気とわがままさーー間違いない、こいつは!

 あの時ミライヴィアに仕えた荒野の魔法使い、妖精の末裔

「ようくも今日まで生き延びたなぁ!アン・ヴィタ!」

 こんな窮地に助っ人が都合よく現したのは、めでたいだか、こいつアン・ヴィタの場合は流石に助かれるのかと疑う

「貴様こそ、なんであたしを知った振りにしてーーてめぇ、その中身!ギルベルトじゃないか、死にぞこないのカイザー様がこんな小娘の姿で何をしている!」

 人間の精神を見抜ける妖精として、一瞬でギルベルトを分かったアン・ヴィタ、腐れ縁と認めでも相変わらず動き魔法の詠唱を止めていない

「何の原因か知らないか、知るつもりもない!ーーとりあえず、貴様があいつを惹きつけろ!その間にあたしがヤツを倒す!」

「言われなくでも!」

 ただ一撃であれほどの巨大怪獣を倒せない事は最初から承知、既に魔法の連撃を図っていたアン・ヴィタ、その手のひらに光るのは蒼く氷の息吹

 光の柱に直撃されでもただ殻に少々の亀裂が増えただけ、依然としてフルパワーの怪獣が口を開けて反撃、星命力の象徴たる光を地面から吸い上げ、口の中で炎に転換してチャージ

「こっち見ろよ、バケモノ!」

 柔らかそうな口の中を狙って撃つ、ビームと肉体の衝撃で些細な火花が散らし、怪獣に何かダメージが通したと見えない

 しかし、挑発的な攻撃としては効果抜群、元々山頂を狙う怪獣がギルベルトに向けて口に溜めている炎を吐き出した

 いくら軍用の対魔力フィールドが着いているとは言え、これ程のサイズ差にとって、数秒しか持たない。いや、数秒が持てるだけで旧帝国時代の奇跡的なハイテクノロジーに感謝だ

「早くしろよ、クソババ!」

「もうやってるのよ!ーー炎には氷を!喰らえ!究極氷結神槍アルテマド・グラーセルス

 摂理を書き換えすことでマイナス1000℃以下の氷を作り出せ、槍の形に固まって打ち飛ばす技、妙に何処から見たような既視感が...?

 氷の槍が火山のような怪獣の後ろ殻にぶっつがった瞬間に溶かれ、その衝撃によって怪獣の殻に更に大きな亀裂を広がり

 そして爆散した絶対零度を遥かに下回る超零度の凍気、炎すら凍らせ、その中心から約半径30メートル以内の物をほぼ無差別に氷の地獄へと誘う

 ほぼ、ね。敢えて爆発を制御したが、ターゲットから削除したか、魔法のプログラミングについてそんな細かいことは知らない、だがルナティアは何の影響も受けずにちゃんとそこに立つ

「やったか?」思わずに声を出したルナティア

「勝手にフラグ立つなよ?」

 怪獣は凍らせた、一時的になぁ

 しかし、その氷の塊から伝わる呼吸音、どんどん広がる亀裂。どれもまだ怪獣を徹底的に仕留めていないっと示している

「生憎、あたしは残り一発しかない。なぁ、ギルベルト?お前らの魔壊騎ケイオス・キャバルリィはどこだ?こんな奴を倒すためにあったんだろう?」

「こっちこそ知りたいよ!いきなり二千年も越えて、どっちも残されていないよ!」

「へぇ、そうなだぁ。少々故郷に帰ったら、たかが二千年でもう忘れちぃまったかぃお前ら?」

「ちょーーまぁいいわ!アン!貴様は召喚系の魔法使えるだなぁ!」

「も~ちろん、魔法の開祖に何バカげなことを問うーーほぉ、分かった、随分と荒れた発想だなぁ。」

「やればさっさとやるよ!」

「いいだろ!召喚陣はあたしが描く、てめぇはその中にじっとしてろ!」

 一瞬だけで考えがシンクロした敵だった二人。確かにいまは怪獣に立ちはだかる魔壊騎ケイオス・キャバルリィがない。しかし、魔法とは星命力を用いて現実を書き換えす奇跡の技ーー今はないなら、過去から呼べばいいーー時空ごと歪む最強の大召喚術を使って!

 ルナティアごとギルベルト、その精神に刻まれた過去の情報を通じて、帝国時代のどこかの倉庫から魔壊騎ケイオス・キャバルリィを呼び出す

 戦闘再開の時に有利な位置を取る為に、怪獣の後ろに立ったルナティア。彼女の周りから巨大な魔法陣が描き始めた

 それと同時にーー

 --地球・オーストラリア--

 ハイテクそうに見える格納庫、静かに聳え立つブロンズ色の巨大ロボットの下、謎の魔法陣が勝手に現わして描き始め、光っていた

「司令、これは?」

「超遠距離から受信、三号機、伝送ワープシーケンス止まりません!」

「コロッサス三号機、動きました!」

 点滅繰り返すアラートの赤い光の下、スタッフに見えそうな人たちが急いて動く、必死に魔法陣の中の巨大ロボットを止めようとしている

「至急連邦軍本部に連絡!トリントン基地に未知の攻撃を受け、起動実験中の三号機が奪われた!」

 司令官の格好をした中年男性も焦っそうに指揮をとる

「ユウ......!早く脱出を!」

 心配そうな顔をしていた女一人がコックピットの中にいるパイロット格好の男を引っ張っている

「だめだ!コロッサスを守るのが俺の使命だ!最後の最後まで、諦めるもんか!」

「ユウ!」

「わあァァァ!」

 謎の斥力が発生し、コックピットの中にいる男を外に弾いた

「俺を拒むのか、コロッサス...!」

 次の瞬間、約50メートル高の巨大ロボットは魔法陣と共に消えた

 跡形もなく、未知のどこへ飛んだ

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ラスボス転生?!月の女神にTS転生した悪役皇帝、巨大ロボットと共にレコンキスタ 赤枠の竜騎士 @ReiCaryhill

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