第3話 休職中の転職活動はできない?

あれから3ヶ月が経ち、季節は夏を迎えようとしている。

私が倒れた撮影分は既に放送され、何事もなかったかのように物語は進んでいる。あのラブホテルのシーンも、結局1カットだけが使われただけだったと放送を確認できた。


昼過ぎ、ふらふらとベッドから起き上がり、私は改めて今の状況を噛みしめる。

会社を休職して3ヶ月、最初こそ人事部からの定期的な連絡があったが、今では月に一度、傷病手当金と社員積立金の請求書が届くだけだ。


休職を決めた日、震える体を引きずって一人暮らしの自宅に戻った。体が震え、気持ちが悪く、次の日からは起き上がることさえできなくなった。

会社に休職を申し出ると、電話口で人事部の丸尾は同情的な声をかけてくれた。

丸尾は人事部長に電話を取り次いだが、開口一番


「次は君か!」


と笑われた。なんなんだよクソが、とドス黒い感情が自分の中に湧き出ていたのを感じた。


さて、悠々自適な精神病者の休職も早く終わりたい。

今日は転職エージェントと話す日だ。転職サイトに3つほど登録し、届いたスカウトメールの中から「あなたのお悩みを聞かせてください♪メディア業界特化型の転職コンシェルジュです☆」という件名で連絡をくれたエージェントと話してみることにした。プロフィール写真が同い年くらいで、女性で、優しそうな雰囲気だったからだ。


時刻になり、電話がかかってくる。

「もしもし」

「もしもし、転職エージェント『明日は明日の風』の佐藤と申します。こんにちは」

「こんにちは。よろしくお願いします」


最初の会話は順調に進んだ。

生年月日、学歴、現在の仕事の内容を滞りなく話すことができた。


しかし、次第に私は戸惑ってしまった。

「現在の年収はおいくらでしょうか?」


「え?ええと……わからないです。」


私には自分の年収がよくわからなかった。残業代が月によって異なるため、明確な額を把握していなかったのだ。佐藤さんは少し驚いた様子だったが、すぐに話を進めた。


「次の会社ではどのようなことをやりたいでしょうか?」

「え、ええと……好きを仕事にしたい……ワークライフバランスはいい環境で……」

佐藤さんの声に微かにイライラが混じるのを感じた。


「では、転職の時期はいつ頃をお考えですか?」

「実は今、休職中でして……最大1年8ヶ月ほどお休みできるので、満期まで休んでから考えようかなと思っているんです。」

「えっ」


佐藤さんが声にならない悲鳴をあげた。

その後、彼女は「そうでしたらそのタイミングでまた検討くださいさよなら」とそそくさと電話を切った。


私はその突然の変化に驚いた。何が起こったのだろう?


インターネットで調べると、休職中の転職はかなり難しいことが分かった。私に残された選択肢は、病気を隠して転職するか、復帰するかの二択だ。復帰は考えておらず、どうやって病気を隠して転職すればいいのかも分からない。


質問サイトでは、「適応障害で休職中ですが、転職できますか?」という質問に対して、辛辣なコメントが並んでいた。「休ませてもらっているのに会社を辞めたいなんて迷惑」「今すぐ辞めろ」という声。

しかし、時には「面接官に正直に言えば理解してくれますよ」という希望的なコメントもあった。しかし、私はその希望的な意見が現実逃避のようにしか思えなかった。


佐藤さんの冷たい対応は、よくある話なのだろう。私の未来はどうなるのだろう?自

自分の年収もよくわかってない、何もやりたいことがない

仕事はできればしたくない

一生ニート?!いやいや、そんなのあり得ないし!!

と焦る気持ちだけがはやるが、何もなす術がない。

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ブラック企業勤めの私が転職活動したら、転職エージェントになってしかも年収1000万円になった話 @lovevaation

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