第4話 虫

この話に関して、僕と同じ状況の人がいたら連絡ください。そのために今回は話します。


自分は今高校1年の年なんですけど、幼稚園から小学生の時期、よく虫(蟻、蝶、芋虫など)を見つけたら、何かの衝動に駆られて虫を潰したり、解体したりして楽しんでた記憶がありませんか?今思えばほんとに気持ち悪く残酷なことをしてたなって思いません?自分も小5か小6ぐらいまでそんなことをやってました。でも人間って奇妙ですよね、ある一定の時期になるとふとその残酷な行為をやめるんですよ、やめるって言う言い方は良くないですね、「やめた方がいい」ってなるんですよ。それは年齢が上がってくにつれて命の尊さを学んで行くからだと思うんです。でもそのとは別の意味でやめてる人もいると思うんですよ、僕みたいな人が、、


中学三年生の時、7月中旬あたりに学校が終わり、その日はちょうど一学期の終業式で明日から夏休みになった日だったことを覚えています。いつもは帰り道が一緒の友達と帰ってるんですが、友達が体育の授業中に怪我をして早退してしまったんです。その日に限り自分は1人で下校していました。その日は真夏日で日差しも強く、熱いシャワーを受けてるような感覚でした。蝉の声も人の声よりも人一倍でかく鳴り響いていました。さすがに暑すぎてこのままだと熱中症になってしまうと思い、道端にポツンと立っていた自販機でポカリを買ったんで。立って飲むのも良かったんですが、その近くに公園があったんでそこにあったベンチに腰を下ろし、ペットボトルの蓋を開けポカリを飲んでいました。一気にポカリを飲み干し、暑さによるだるさが一気になくなり、生き返る実感が湧きました。すると声が聞こえたんです。視線を少し遠くに向けると公園のちょうど真ん中辺りだと思うんですが、夏休みに入って遊んでいると思われる子供が3人、幼稚園でいう年長さんぐらいでしょうか?腰を深くおろし輪になって何かをしてました。近くにお母さんらしき人も見当たらないので、こんな暑いなか子供を置いて何をしているのかと少し心配になり、子供たちに近づきました。

「そこで何してるの?」と話しかけたらいっせいに振り返って少しビクッとしました。振り返るのと同時に子供たちの汗もかかり、その最中、輪になっている中心が何かあるのが見えました。そして、わかったんです。子供たちが何をしてたのか、虫(蝉)をいたぶってたんです。2人の子供たちの手には、1人は木の棒、1人は石持っており、最後の1人はなにも持たず人差し指をつきだしてる状態で、木の先、石の所々、人差し指の先に蝉の血と思われる液体がこびりついていました。それも1匹ではなかったんです。何匹もの蝉の死骸がありました。ざっと10匹ぐらい、子供ってのはほんとに残酷だなって改めて思いました。まぁ自分も現在進行形で子供ですが、この子たちの年齢の時に自分もこんなことをやっていたなと思い出しました。でも今は、やってはいけないこと、やっていい事の区別はつくようになり、自分も大人になっていってるなと実感しました。

木の棒を持ってる子供は無邪気な声で「虫さんで遊んでるの」と元気に言って、また蝉をつついていました。それに続き他の2人も共同作業のようにつつき始めました。石でつついてる子が僕の方を振り向き「楽しいよ」っと言ってきました。僕は苦笑いをし、子供たちの前に視線を合わせるためしゃがみこみました。

ねぇねぇと声をかけると子供たちはまた自分の方に振り返りつつくのをやめました。3人がいっせいに「なぁに?」と言い、僕はそれに続き言葉を発しました。これは言わなきゃいけないこと、


「君たちがやってる事は悪いことだよ、命を奪ってるんだよ?君たちにもお父さん、お母さんがいて、その人が誰かに虐められていなくなったらいやでしょ?この虫さんたちにも家族がいて、自分の親、子供がこんことをされて死んだら悲しむでしょ?お兄さんは君たちにそれだけはわかってほしいなぁ」


自分は親にそう言われ虫を殺す行為をやめ、命の尊さを知りました。それを今自分は別の子供たちに伝えている。そう世界は循環して人は生き、人生を歩んでいっているのかと初めてそう感じました。子供たちは自分から視線を下ろし蝉たちの死骸を見ていました。少しは伝わったかなと思い、間が少し空いたところで、じゃあごめんなさいして土に埋めようかと言おうとした瞬間です。


「お兄さんもやってたでしょ?」


誰かはわかりませんでしたが子供のひとりがいったんです。

「え?」

子供たちはいっせいに立ち上がり自分を見下ろす状態になりました。そして、笑顔を自分に向けました。その笑顔は子供のする笑顔とはかけ離れており、人を嘲笑うかのような笑顔でした。

そしてまた誰かがいいました。

「今更、そんな命は大切にって言っても、遅いんだよ、お兄さんも殺してたんだから」

自分は驚きと戸惑いが走りました。今まで無邪気な声と全く違う別の声質で、子供が言わないようなことを言っているからです。

自分は焦りながらも、ばっと立ち上がり

「確かに、お兄さんも君たちみたいなことをしてた時期があった、でも」

「殺しは殺しだよ、今さら善人の振りをしても遅いんだよ偽善者」

自分の話をさえぎり、見上げながら言い放ちました。

いや、こんな子供いるわけが無い、いたとしてもこんな子供がいて溜まるかと思いました。またすごい不思議な感じだったんです。子供たちが喋ると同時に蝉の鳴き声が聞こえるんです。周りいる蝉とかではなく、その子供たちの口から出てるようなんです。子供が声を発したと同時に大きく鳴り響く、それは次第に蝉だけではなく、蛙やコオロギ、色んな虫の鳴き声を出してるんです。

「お兄さんも(虫の鳴き声)、だから(虫の鳴き声)」

子供たちの声がはっきり聞こえなくなり、虫の鳴き声が強くなってきました。暑さのせいなのか、この意味不明な状況のせいなのか急に視界が悪くなっていき、立ってるのもきつくなり膝を下ろし、倒れそうになったため地面に手を付き意識が朦朧としはじめました。その時、子供のひとりであろう、誰かが駆け足で自分の耳元に近づいてきたんです。その瞬間虫の鳴き声がいっせいに止まりシーンと静まり返ったんです。そして、その子が、、いやもう誰でもいいです。誰かが自分の耳元で言ったんですよ。


「もう取り返しはつかないんですよ」


そこで僕は目を覚ましました。公園のベンチに座ってたんです。汗だくの状態で、ポカリは地面に落ちており、空っぽでした。何故か焦りポケットからスマホを取りだして電源ボタンを押し時間を見ると17時でした。自分が公園に訪れたのが16時55分辺りなので、目が覚めて5分しか経ってなかったんです。公園には自分しかおらず子供たちの姿は見えない、あれは夢だったんでしょうか?

でもあれは現実だと自分は今も思うんですよ。なんでって?自分はあの日を境に学校に通わなくなったんです。あの不思議な体験から色んな虫の鳴き声が自分の耳元で鳴いているんですよ。耳に住み着いてるかのように、学校に行っても友達の声、先生の声も何も聞こえないし、みんなも自分をおかしな人間って思い始めて、両親にも相談できなく、死のうとも思いました。

でも死なせてくれないんですよ、虫がとめるんです。その時に限り虫の鳴き声と共に聞こえてくるんです。

「生きて償え」って

だから、今これを聞いてる誰か僕と同じ状況の人がいたら連絡よろしくお願いいたします。

僕はもう無理です。あはは、、

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ヨルニキク ヒル @kiyojii

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