第5話「最上級生ミハルとルカ」

 本当に楽しい7年だった。


最上級生になったミハルは思う。


ククルも少しずつ言葉を話す様になった。


愛想笑いも出来る。


けれど私が見たいのは-。


休憩中、自室から星空を見て考えを巡らす。


すると隣にルカが来ていた。


「また考え事をしているの?」


ルカは心配そうにミハルに尋ねる。


「つい最近なの。あの子が覚知なし。


生まれた時から魔導が使えたなんて。


あの子から直接聞いた」


驚きを隠せないルカ。思わず声が大きくなった。


「覚知なし?あの白い辞書に想念を込めて


二大禁忌を聞けた者だけよ。


魔導を覚えられるのは。なんで?」


「しっ、静かにして。


校長先生とガリソン先生には相談した。


そしたら、やっぱりそうかって仰っていた。


なるべく皆を不安にさせたくない」


窘めるミハルは続けて言う。


「昔、魔導しかできなかった人達は


人間らしく生きられなかったって。」


「それじゃあ、ククル君は?


たまに受け答えに不安を感じる事があるわ。


感情が薄い。」


眼を伏せるルカ。


声が尻すぼみに小さくなっていく。


「目の前の事をやるべきよルカ。


それに明日は卒業試験。


『魔の山』でお互い頑張りましょう。


大丈夫。『ラストゴブリン』なんて


今更、問題ないでしょ?」


両手を握って、ミハルはルカを見つめる。


「そうね、軽くあしらって、


下級生達に自慢してやろう」


ルカの返答。握り返していた。


共に幻視の星空を見つめる。


「お休み」の挨拶を交わし、


明日の卒業試験に備えて寝床へ就いた。

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