第4話「お肉戦争」
夕食。それは温かな団らん。
そう、月の末の「この日」を除いては。
飢えた食べ盛りの子供たちは月末の夕餉に
皆、猛獣となる。
それはハルス魔導学院の伝統
「お肉戦争」と呼ばれる闘いだ。
ミハル、ククル、ルカはまだ子供。
月末にごちそうが食べられると
分かっていればじっとしていられない。
ククルは思い出す。ミハルと一緒に食べた
「お肉入りのスープ」の特別に美味しかった事を。
だって、ミハルと一緒に帰って来た
その日に食べたのだから。
飛び切り美味しいに決まっている。
さて、ルカとミハルは
ククルをどうすべきか悩んでいた。
「ククルは『調理』しかさせられないよ!」
「せっかくの肉を吹き飛ばすのでは?ミハル?」
「人間を吹き飛ばしちゃうよりまし!」
「あ!いい方法があるよ。耳貸して。」
少女達は覚悟を決め、いざ台所という名の戦場へ。
ククルを引きずって。え?お肉だけほしい?甘い!
白亜のハルス魔導学院が「紅く」燃え上がる。
生徒全員が「お肉」を巡って争うのだから!!
をぶつけるのだから!!
まぁ彼らは腹ペコということ。
やはり、戦場には先客が!
既に魔導陣が張られている!
相手はリック、ジン、ダークの3人組。
瞬間、ルカの審美眼が走る!
リック、正義感の塊・凛々しき瞳。
大臣の一人息子。まぁまぁ。でも性格難あり。
ジン、こいつはファイサル王子より残念。
言動が特に。
ダーク、うん。影が薄いよ!
これ以上何もいうまい。
ルカは手加減不要と「ネ申」の審判を下した。
両こぶしに炎の魔導を宿す。
一方、ミハルは帯刀していた。
未熟者は「お肉戦争」に限り帯刀を許される。
よってルカが相手3人を引き受けている間に、
ミハルが肉を切り取り、ククルに渡す事にした。
煙が燃え立つ竈の様な空間の中で
少年3人組と少女2人と幼子の戦いが始まる。
雰囲気ピッタリ赤毛のルカが、「先手必勝!」と
言わんばかりにリックに殴り掛かった!
炎を纏った拳でボディーブロー!!
リックは爽やかな顔でサラリとかわし挑発した。
「こんな程度か!僕を本気にさせて見ろ!!」
しーん。ルカはドン引き。
だってこの金髪碧眼美少年が、だ。
信じられるかい?お肉を食べたいだけで
ここまでキザな事を言ってしまうのだぜ。
その台詞を聞いた当のルカは闘魂で笑顔を歪める。
「本気にさせたくなっちゃうじゃないか!!」
ルカの笑顔はさながら猛獣の様だ。
「そんな、そんな事、教えていない。
私が目覚めさせてしまったんだ!」とか
ガリソンが、どこぞの丘の上で慟哭、コホン。
嘆きかねない獅子の如き勢いで
ラッシュ、ラッシュ、猛ラッシュ!
左ボディーがリックの腹部にめり込む!
さしもの美少年も苦悶の表情で崩れ落ちた。
だが爆煙にジンが隠れていた。
見た目だけはましな彼がアレな台詞を吐く。
「女性を傷つけるのは嫌いなのだがね。
僕たちにも、都合というものがある。
そう、肉を食べるという都合が!」
氷の剣をまさにルカに振りかざさんとした
その瞬間、ミハルが「ファイア・アロー」
を放つと剣は粉々に打ち砕かれた。
驚くリックとジン。
「ミハル、お前、ファイア・アロー使えない筈だ。
だから刀を持って来たんじゃないのか?」
あっかんべぇーをするミハル。
「いつまでも下に見てるから出し抜かれるの!」
捨て台詞を投げ付け一瞬で肉を解体。
だが闇に潜んでいたダークが影を操り、
肉を奪おうとする!
そこに狙いすましたかのように
讃美歌を歌うククル!!
瞬く間に消滅するダークの影!
肉の奪い合いは完全にミハル達の勝利!
ククルでは普通に焼いても戦利品(お肉)を
消し炭にするだろうという事で、
お姉さん2人が調理した。
「やっぱりレア。最高よねぇ」
ご機嫌なルカ。ミハルとククルも我を忘れる。
3人は極上の肉にありつけたようだ。
月末のお肉の何と甘美な事か。
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