第6話「卒業試験ー魔王強襲①ー」
卒業試験の課題は、
訓練用の枷が外れたゴブリンを10体倒す事。
「ラストゴブリン」の『ラスト』。
それは『手加減はこれで終わり』と言う意味。
とは言っても事前に強さは、
卒業試験の半年前に最上級生に教えられる。
折角訓練した教え子に不測の事態があっては
教師たちも困る。彼らの時間と忍耐が水の泡だ。
この世界の「ゴブリン」は喋れない強戦士。
強さは、歴戦の人間の戦士に匹敵する。
この壁を越えられなければ
「魔導士」として大成できない。
試験当日、最上級生全員と共に集められたミハル。
ククルを抱きしめた「魔の山」の中央にて
一瞬、感傷がよぎりそうになる。
「駄目だ、私がしっかりしなくちゃ!」
両頬を叩いた。
号砲と共に獣の雄叫びが反響する!
放たれた200を超す「ラストゴブリン」!
ミハルは森を抜け岸壁を背にした広場で
ゴブリンの群れと遭遇する。
ルカ直伝の「ファイア・ブロー」で1匹目を瞬殺。
「よし!」
森の後ろから飛び掛かってくる無法者には
弾丸のように「ファイア・ショット」!
頭を打ち抜く。
『楽勝ね!』
そう思ったミハルは信じられない物を見た。
岩山を背にした3体目の
『ゴブリン』が「氷の剣」を構えている。
「まさか。あれは、あれは!」
ミハルの思考より速く敵が哂った。
「そうだ、僕だよ。ミハル、ジンだよ」
恐怖で凍りつくミハル。
目の前の怪物を見て金縛りになる。
そして周囲には
30体近くいるであろう「ラストゴブリン」。
楽し気な『ジン』は不気味に微笑んでいる。
「アハハ!私はあんな腑抜けな小僧になど興味は
ないよ。まぁ、あの小僧の悪企みが気に入ってね?
君も少しは周囲の事を考えた方がいい」
揶揄われたことが分かった
ミハルは闘志を甦らせる!
「誰なの!!お前は!!」
ゴブリンは
肌が青い人間の姿になり口調を慇懃無礼にした。
「品がない。
お嬢様ともあろうものが。親が泣いてしまうね。
とはいえ名乗らない私も些か失礼なのは事実か。
ダンド。魔王を目指すものだ。
ククルといったかね?
中々に高値で売れそうでねぇ。
君を人質にすればあの『魔導人形』も
大人しくなるだろうと踏んでいるのさ。」
更に角と牙を表出する。膝から崩れ落ちる。
絶望で動けないミハルは
「到底敵わない」ことを直感で理解した。
その刹那、一瞬で
「ライトニング」の言霊と共に高く飛び上がり、
身体を丸めて空中で垂直回転したククル。
ミハルの目の前に着地すれば、
30体のラストゴブリンは跡形もない。
ククルはダンドを睨みつける。
「ミハルねぇに何をする、お前!」
あのおとなしいククルが怒っている。
いやそれどころではない。
「本命のお待ちかねだな、手間が省けた。
これでも、喰らえ!」
怪人の咆哮は大爆炎となり2人を襲った。
沸立つ黒煙。後方の森や岩が黒く焼け焦げる。
が、無傷のククルとミハル。ダンドは舌打ちする。
「器用だな、氷雪魔導で相殺するとはね。
いいのかね?攻撃魔導で身を守る事は危険な賭け。
どれほど消耗するか。魔力は殆ど残っていまい。」
つまりククルは立っているのがもうやっと。
『何がミハルねぇと呼べ、よ。
結局、私はこの子の足手まといじゃない!』
口惜しさと絶望でもう立ち上がれないミハル。
2人はもう終わりなのか。
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