第2話

「一体、どういうことなんだ?」


さっきの光景が頭からこびりついて離れない。

自分には妹なんていなかったし、自分がもう一人いるなんてありえない。


なら、この世界どういうことなんだ?

逆行――いや、違うだろう。


なら――転移。

だが、僕の世界にはいなかった妹はどういうことなんだ?


木にもたれかかって、僕は熟考する。


―――よくわからない。

確かに、僕はあのとき『もう一度チャンスが欲しい』って願った。

なのに、自分がもう一人いる世界線と飛ばされるなんて、夢にも思わない。

なら、あの『神具』は僕のなんの願いを叶えたんだ―――


「こんな事考えたって、今は無駄か。」


そうだ。こんな事考えてても、今すぐにでもわかるはずじゃない。

頭の悪い僕だから尚更。

 

取り敢えず、今の年と日にちを知る必要がある。

とすると、ここから近い町はダール町か。


懐かしいなぁ、といっても、僕にとって全部懐かしいけどさ。

まあ、気分を改めて、向かうとしよう。


僕は懐かしのダール町へ、軽快な足取りで向かった。





□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇



ダール町。


まあまあ栄えてて、色んな事業とかが盛んで結構いいところだ。

孤児院が建っていて、僕の学園の同年代に神童と呼ばれた子がいる。

治安もよくて、悪いところが少なくてとても住みやすい場所だ。

人も優しいしね。


ここに来た理由は、年と日にち聞くためだ。

それがわかったら、これから起こる出来事は全部覚えてる。


ちょうど近くにいた串焼きのおじさんに聞いてみるか。


「こんにちは。肉と魚2つずつ頂戴。」

「あいよ、見ない顔だな、どっから来たんだ?」

「東の方から来たよ。でさ、今日は何年何月何日だっけ?」

「んだぁ?知らないのか?2046年赤月25日だぞ。」

「ごめんごめん。ありがとうおじさん。」


なるほど……

どうやら、転移する前から14年も戻っているようだ。

それに赤月―――日本で表すと6月―――25日ということは、今日は神福ギフトの日だ。

この世界の人間は、5歳になったら能力を発現するようになる。

それを診断するのが神福ギフトだ。


あの雰囲気、すげー嫌なんだよなぁ。

しかも、お世辞にも僕のギフトは良いと言えるものではなかった。

まぁ、勇者っていう最高のギフトを除けばの話だが。

そう、勇者だ。



――――果たしてこの世界では僕は『勇者』のギフトをもらっているだろうか?



この世界、リン・スパイラルは存在している。

外の世界から転移した僕に、同じ勇者のギフトが与えられるだろうか?


それもまた確認しないといけない。

また僕が熟考していたら、串焼きのおじさんに肩を叩かれる。


「おいなにしてんだ?ほら、ご注文の品だよ。」

「あっ、ごめんおじさん。はいっお金。」

「あい、毎度あり。気を付けて帰れよ」


おじさんから串焼きをもらって、僕は歩く。

向かう先は、聖堂。神福ギフトを行う場所だ。




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失敗作は成功の平行世界を守り抜く @kanariaarcana

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