平和な海岸で

こむぎこちゃん

第1話

 青い空。

 白い雲。

 目の前に広がるのは、透き通るようなコバルトブルーの海。

 穏やかに寄せては引く波が、男の足にかかる。

 平和な光景に、男はほうとため息をついた。

 男は、小さな船の漁師だ。

 毎朝早くに漁港へ行き、妻と幼い子どもを食わせるため、一生懸命に漁をする毎日である。

 仕事で海にいるおかげで男は休みにまで海に行く気にはなれず、海水浴に行くことはなかった。

 いつもいるのは、堅いコンクリートに覆われ、いくつもの船が泊まり、魚のにおいのする漁港。

 男にとって、このような静かで平和な空気の砂浜を歩くことは小さな子どものとき以来であった。

 こんなふうに砂浜でゆっくりするのも悪くないもんだ。

 ……こんな状況でなければ、の話だがな。

 そう思い、男は横を見る。

 隣には、ボロボロの木の板。

 男の船の残骸だ。

 急な天候悪化で、男の船は難破。気がつけば、この無人島に流れ着いていたというわけである。

 一体ここはどこの島で、どうやったら帰れるのだろうか……。

 男は途方に暮れて、憎みたくなるほどに美しい青空を仰ぐのであった。

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平和な海岸で こむぎこちゃん @flower79

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