美味しかったのならいいじゃんか。
秋乃晃
ポイントカードはプラチナランク
ある夏の日のこと。
私がいつも通り電車を乗り継いでドーナツを買いに行ったら、レジの新人さん? が「新商品です! お試しください!」って、紙パックに入れたおまけをくれた。
ドーナツ大好きだから、毎週、月によっては週に三回行く時もあるけれど、あのスタッフさんを見たのは初めて。だから、新人さんだと思う。
「新商品かあ」
今日は世間一般的にはお盆休みだから、学生の姿はない。私は曲がりなりにも大学教授なので、休みだろうと研究室に来てもいいのん。
店内でダズンを食べるのはさすがにちょっとはずかしいから、いつも持ち帰り。研究室にこもってランチタイム。
こんな風に大きめなひとりごとを言っていても誰にも迷惑はかからない。
「
お店では「ありがとうございます!」と言って受け取ったし、わざわざ用意してくれたものを断るのはよくない気がした。が、私はオリジナル・グレーズドが大好きで、オリジナル・グレーズドを買いに行っている。
たまに期間限定のドーナツを買ってみるも、なんだか違うのよねん。なんか、こう、美味しいんだけど、思ってたんと違うっていうか。オリグレが最高! 至高! 究極!
あまりにもオリグレを好きすぎるのがスタッフさんたちにも伝わっちゃっていて、最近は新しいのをオススメされることもない。と、考えても、やっぱりあのスタッフさんは新人さんだったんじゃまいか?
「うーん……?」
紙パックを開ける。そのドーナツは青白く光っていた。目をこらす。見ていて気持ち悪くはならないが、なんで光っているのかはこの大学教授の
「まあいいや。食べて感想を伝えるのが善きカスタマーの姿じゃーん?」
まずは一口。青いのはほら、ブルーハワイとかブルーベリーとか、そういう系統の味なのかな、と思っていたけども、ホワイトチョコっぽい味。悪くはない。
悪くはないけども、オリグレのほうが好きかな。もぐもぐしながら、まあでも、光っているし、見た目のインパクトはあるよねん、と脳内でコメントをまとめる。五口で完食。
*
「――で、次にお店に行って『青いピカピカのドーナツ、美味しかったです』って伝えたら、スタッフさんたちにびっくりされちゃったのん。うちにそんなスタッフはいませんよ、とまで言われちゃってさーあ。なんだったんだろう? ……体調の変化? 特に何もないのん。真夏の不思議な体験ってことで、おしまい!」
美味しかったのならいいじゃんか。 秋乃晃 @EM_Akino
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