チャプター5

 黄色い魔法陣とともに現れたのは、黒い一枚布を着ている若い青年の姿だった。年齢は20歳前後だろうか。

 肩までかかる赤い髪で、耳はエルフのように長く、翼が生えていた。

 魔王オヴェイルの姿を見たハティエルは、咄嗟に、


「えっ……天使?」


 と声をだした。

 オヴェイルは両手を開くと笑顔を作った。


「ほう、俺の姿を見て、そう言うか。ということは、お前もそうか?」


 ハティエルはこの時、複数のパーティーで同時に魔王と戦闘をするとどういう会話になるのだろうと考えていた。

 嫌な流れを感じたディグラットはエターナル・ギグを抜いた。エリシアとミュカも武器を構えていた。この流れで戦わないという流れになるのは絶対に避けたかったからだ。

 ハティエルが武器を構える前に、ディグラットとエリシアは突撃をしていた。ミュカは支援魔法を2人にかけた。

 オヴェイルはディグラットの剣をよけ、エリシアの右手を掴んだ。そして、天井に力任せに投げ飛ばすと、エリシアはくるくると回転しながら向きを変え、天井を足場に再突撃をした。

 ハティエルはもっと話を聞きたかったが、戦いが始まってしまったので仕方がなく武器を構えて突撃した。

 ハティエルとエリシアの攻撃をオヴェイルは後退してよけると、落ちてくるエリシアをハティエルのほうに蹴飛ばした。

 エリシアは、


「ハティエルちゃん!」


 と声をあげると、ハティエルはなにをしてほしいのかを察し、両手で盾を構えた。エリシアはそれを足場に、再度オヴェイルに突撃をした。

 彼女の表情は楽しそうだ。

 オヴェイルは炎の魔法を連打した。エリシアも流石にこれは直撃を食らってしまい、バウンドしながら飛ばされていった。

 ミュカがさっとかけよって回復魔法を入れていく。

 ディグラットとハティエルは2人でオヴェイルに攻撃をしかけ、エリシアを守った。

 オヴェイルは両手をあげながら宙に浮くと、長い柄の斧が現れた。彼はそれを構えながら、ディグラットへ突撃した。

 すかさずハティエルがカバーに入るが、その一撃は重かった。

 ディグラットが剣を振ると、オヴェイルは斧を合わせていく。ガキンガキンと音が響いた。


「お前もそれかよ!」

「地上で一番かっこいいのがこれだろ?天使と言えば斧なんだよ!」


 傷のいえたエリシアも攻撃に加わった。オヴェイルはディグラットは斧、エリシアは蹴りで対応する。

 ミュカも戦闘に加わり、魔法で応戦するとオヴェイルは流石に手が足りないようだった。

 ハティエルはミュカへの意識を怠らず、エリシアに加勢することにした。オヴェイルの蹴りであれば自分の盾で防げるということと、エリシアに隙を作ってやることができるからだ。

 長い旅でハティエルの動きを理解していたエリシアは、チャンスをのがさずにオヴェイルの腹に一撃を食らわせることができた。痛みをたえながら宙に浮いて逃げると、行動を見越していたミュカのイフリート・キャノンに焼き尽くされた。魔法は完全にミュカのほうが上だった。

 両手でふせいで顔へのダメージを防いだオヴェイルは、ミュカに向けて斧を投げ飛ばした。だが、こんな攻撃はハティエルが簡単に防ぐ。

 すると、オヴェイルは笑いながら両手をあげた。


「まいった!ギブアップだ!」

「はあ?あなたもですかー?」


 エリシアは不機嫌そうだった。


「あなた、魔王なのに弱すぎませんかー?凄い魔法でどかーんとこないんですかー?」

「しょうがないだろう?俺は元々は天使だぞ。魔法の能力はその天使より若干、有能って程度だ」


 オヴェイルがおりてくると、台座が出てきた。


「参考までに俺を倒すとなにが出てくるか教えてやろうか?『女神のペンダント』ってのが出てくるんだ」


 ディグラットは首をかしげた。


「どんな効果があるんだ?」

「アリム様の顔が彫られたありがたいペンダントだ。効果はなにも無い」


 4人はあっけにとられた。

 そこへ、デュナンタが現れた。


「終わったようね」


 ハティエルは言った。


「どういうこと?なんでデュナンタがこの部屋にはいれるの?」

「私はダンジョンの仕組みを解明して、ゲートトラッカーをいじったから」


 オヴェイルは両手を広げた。


「おう、デュナンタ。200年ぶりか?」

「そうね。だいたい、あなたがフロアボスなんてのは無理な話なのよ。200年、なにしてたの?」

「ヒマだったから寝てた」

「私、200年前に言ったよね?修行しなさいって。てっきりやっていたものだとばかりに思っていたから、私はさっき、ハティエルたちに魔王は強いって言ったばかりなのに……」


 オヴェイルは苦笑いをしながら右手で髪をかきあげた。


「今度こそ、ちゃんと修業をするかな」


 話についていけていないハティエルは、どういうことなのか尋ねると、デュナンタは、


「台座に触れて先に進むといいわ。本番はこれからよ。私もいくから」


 と言うだけで他にはなにも言わなかった。

 ハティエルたちは仕方がないので、台座に触れて転送をした。


 -※-


 そこは、広い草原だった。

 正面には白い神殿が見える。

 ゲートトラッカーには炎のエンブレムが刻まれていた。

 爽やかな優しい風を感じながら、ミュカは言った。


「ここが……地下7層ですか?」


 ハティエルは首を横にふった。


「いや……違う。ここは……楽園だよ」

「楽園って、ハティちゃんたちが住んでいるところですよね?ここが地下7層なんですか?」

「ハティはあの神殿を知っているのか?」

「うん、あれはアリム様や大天使の住んでいる場所」

「つまり、次の相手はそいつらか?いや、だが……」

「そうよ」


 いつの間にか背後にデュナンタがいた。


「敵はアリム。すべての元凶よ」

「うそでしょ?アリム様が?」

「私はずっと待っていたのよ。一人じゃどう考えてもアリムは倒せない。でも、他にも天使がいれば話が変わってくるかもって。オヴェイルはダメだった。あいつはアリムに屈しているから。だから200年の間、天使を探しながらダンジョンのなかで支援をしていたの。好きなサンドウィッチも食べられずに……毎朝の楽しみだったのに……いや」


 デュナンタは咳払いをすると、


「行くわよ、ハティエル。消滅させられる前にすべてを叩き込んで、一瞬でケリをつけるからね」


 と言った。


「ちょ、ちょっと待ってよデュナンタ。なんで私達がアリム様と戦わないといけないの?魔王を倒して大天使の試験が終わったんだから、私は大天使になれるんでしょ?」

「あなた、大天使ってどれぐらいいるか知ってる?」


 ハティエルは、大天使がどれだけいるのかなどとは考えたことも無かった。神殿に住んでいるということは聞かされていたが、自分の身分では会うことすらできなかった。


「ゼロよ」

「えっ?それって、一人もいないってこと?」


 デュナンタが答える前に、草原に凄まじいオーラを感じた。ハティエルだけではなく、ミュカたちも鳥肌が立つほどの凄まじいオーラだった。

 そこにはウェーブのかかった長いピンクの髪の女性がいた。女神アリムだった。女神像そのままの姿に、地上人の3人は驚かされた。

 さっと武器を構えたデュナンタを見て、アリムは冷静な表情で、


「あら、あなた生きていたんですか」


 と言った。そして、


「おめでとう、ハティエル。試験に合格です。有能ですね」


 と続けた。


「あの……アリム様、質問がたくさんあるのですが……」


 その瞬間、デュナンタは周囲に響くような大声をあげた。


「ハティエル、みんな!武器を構えて!」


 全員、あっけにとられていたが、ミュカがなんとか声をあげた。


「あの、デュナンタさん、なにがなんだかさっぱりわからないんですが……」

「こいつが元凶よ!ダンジョンを作って地上人を苦しめて、天使を送って楽しんでいたんだ。こいつのせいで地上人がたくさん死んでいるんだ!私の仲間も全員死んだんだ!大天使なんていうのも、そもそもなかったんだ!全部こいつの暇つぶしだったんだ!私達でアリムを倒して、この悪夢からみんなを開放するんだ!」


 すると、エリシアは右手をあげ、恐る恐る言った。


「あのー、デュナンタさん、悪夢ってなんですかー?私達はダンジョン、楽しかったんですよー」

「へっ?」


 デュナンタはきょとんとした。


「だから、ダンジョンをアリム様が作ったのなら、アリム様のおかげで私達は凄く楽しめたんですー。むしろ、感謝ですー。さすがは女神様ですー」

「でも地上人は……」


 ミュカが続いた。


「たしかに死ぬのは悲しいですけど、私達は病気ですから冒険はやめられないんです。それに、ダンジョンができたおかげで強い人はみんなそこに行くようになって、国同士の戦争はなくなりましたし、よかったことのほうが多いんです。エリシアさんの言うとおり、さすがは女神様ですよ」

「でも、私たち天使は……ハティエルは違うのよ」

「私はその……。それより、アリム様。ひとつ質問よいでしょうか?」


 アリムは笑顔だった。


「どうぞ」

「私はこれからどうなるのでしょうか?大天使っていうのは、ないんですよね?オヴェイルを見る限り、消滅っていうわけではなさそうですが……」


 アリムは腕を組み、クスクスと笑い出した。女神像のままの笑顔である。


「あなたはどうしたいの?」


 口調も変わった。


「どう……と、急に言われましても……」

「オヴェイルはあんな魔王は弱すぎるから、自分を魔王にしろって地下6層のフロアボスになったっけ。私はやめておけって言ったんだけどね。オヴェイルは有能だったんだけど、そこだけは無能だったかも」

「……弱いからですか?」


 アリムは笑いながら両手を振った。


「違う違う。地下6層のフロアボスなんて、ヒマだからよ。だって誰もこないじゃない。オヴェイル程度の実力なら、地下4層あたりで十分だと言ったんだけどね。ハティエルはどうする?どこかのフロアボス、やってみる?大天使になりたいっていうならしてあげるし、神殿にも住ませてあげるけど、やることはなにもないよ。仕事は無能な天使を消滅させたり、試験をやらせる天使を選ぶだけ。あ、それじゃ私のやることがなくなっちゃうか」


 そこへ、ミュカが割り込んだ。


「あの、アリム様、一つ文句があるのですが」

「奇遇だな。俺もあるぜ」

「私もですー!」


 それはハティエルが慌ててとめた。今、自分たちの目の前にいるのは、創造主である女神アリムなのである。ほかに話しかけるのとはわけが違うのである。100歩譲って話すだけならまだしも、文句を言うというのはありえない。

 だが、アリムは笑顔を崩さず、どうぞと言った。地上人がなにを言い出すのだろうと、好奇心旺盛な目をしている。


「地下5層からの手抜きはなんなんですか?簡単すぎてまったく面白くありませんでした。吹雪はフィールド全体であるべきですし、マッピングもしなきゃいけないべきでした。地獄も最後らしく、色々とあるべきではないですか?頑張って乗り越えたって感じ、まったくしなかったです」

「ごめん、途中で作るのに飽きちゃった……。そこまでこられる冒険者ってそんなにいないだろうし、まあいいかって感じで……」

「えっ?飽きた?そんな理由で……?」

「うん、飽きちゃった。でもね、最初の方は頑張って作ったんだよ?マップも観光できるようにしてたし、エリアボスもそこそこ実装したし。わかると思うけど。だけど、あれ作るのって大変なんだよ?」


 アリムはディグラットを指さした。


「その剣も、どうしようかなって迷ったんだけどね。精霊殺しはやりすぎだったかなー、あははは」

「マギスファーラとの戦闘はありませんでしたよ?部屋に入った瞬間、ギブアップされました」

「なるほど……じゃあ、地下5層のフロアボスのドロップは見ていないのか……良かった」


 ミュカは恐る恐る聞いた。


「な、なにが落ちていたんですか……?」

「それは、聞かないほうがいいかな。それよりもあなたたち、楽園のことをしゃべったら消滅させるからね?私にできるのは、天使の消滅だけじゃないんだからね!」

「しゃべりません。消滅が怖いのではなく、くだらないからです!」


 そんなミュカをハティエルが必死にとめようとするが、アリムは笑顔を崩さなかった。


「あなた、その性格だとハーモニック・サークルは使えないでしょう?」


 ミュカはギクッとした。


「えっ……。あの……それは……」

「まぁいいや。それで、あなたは私に文句が言いたかっただけなの?」

「違います。地下5層以降もちゃんと作ってくださいというお願いです。できれば、地下7層以降もお願いします」

「ええ……?それ、本気で言っているの?知らないと思うけど、相当大変なんだよ?バランスの調整だってあるし……」


 アリムは腕を組んで空を見上げた。青空が広がっていた。


「あの……アリム様はヒマなんですよね?」

「それを堂々と私に言うなんて、面白いわね、あなた。他の人もそうなの?」


 エリシアとディグラットも力強く頷いた。


「じゃあ、地下5層から作り直そうかな。1年ぐらい待てる?」

「もちろんですよー。ぜひ、ホンキのものをお願いしますー」


 それを聞いたハティエルは言った。


「アリム様、私もそれに挑戦したいのですが」

「大天使にならないの?一緒に手伝ってもらおうと思ったんだけど」

「すいません、オヴェイルみたいに願い事が叶うなら、私を人間にしてください。それで、ミュカたちと一緒に挑んでみたいです」


 エリシアが笑った。


「ハティエルちゃんも病気ですねー」


 アリムが短い詠唱すると、ハティエルは天使の姿に戻った。耳が長く、翼の生えた本来の姿を見て、ミュカたちは驚いた。


「人間になるっていうことは、その姿じゃなくなるのよ?死んだら本当に死ぬけどいいの?年もとるから、デュナンタみたいに若いままで何百年も生きられないよ?ここにももう、こられないけど」

「それで構いません。お願いします」

「うん、わかった」


 もう一度アリムが短い詠唱をすると、ハティエルは人間の姿になった。


「今度は正真正銘の地上人。完全に、人間よ」


 ハティエルは頭を下げた。


「ありがとうございます!というわけで、ミュカ、ディグラット、エリシア、これからもよろしくね!1年後に続きをしよう」


 3人は頷いた。


「はい!」

「もちろんですー!」

「おう!」


 そこへ、武器をおろしたデュナンタは言った。


「えっーと……、その……、私は……?」


 アリムは笑顔で両手を広げた。


「あなたは大天使」

「えっ?」

「試験の合格、おめでとう!楽園で初めての大天使よ!」


 アリムの詠唱で天使の姿に戻ったデュナンタは困惑し始めた。この状態ではもう、勝手に地上にはおりられない。人生はすべて、アリムの意思だ。


「私には、なにかご褒美がないんですか?」

「あるわけないじゃない。200年もダンジョンをほっつき歩いて私に戦いを挑むような反逆者に、ご褒美なんてあるわけないでしょ。あなたはこれから大天使として、ダンジョンづくりをするのよ。まあ、褒めるところもあるよ。冒険者の視点があるのは助かるし」

「そんな……。じゃあ、私の200年はなんだったの……」


 肩を落とすデュナンタを見て、ハティエルたちは笑った。


「アリム様に逆らって消滅させられないだけ、良かったじゃない」


 アリムはゲートトラッカーの氷の結晶と炎のエンブレムを消し、まだ攻略していないことにしろと告げた。

 地下7層ができた時には、デュナンタを使って伝えるので、ちゃんと作った地下5層からやり直せと伝えた。

 魔王もオヴェイルからまともなものに変えるらしい。彼がハティエルのように人間になるのか、大天使としてここで暮らすのかは、あとで本人に決めさせるらしい。

 地下5層も作り直すから行くなと伝えるとミュカは4層では物足りないと文句を言ったが、アリムが1年ぐらい我慢しろというと、素直に従うことにした。


 こうして、ハティエルの大天使の試験は終わり、地上へと転送された。


 -※-


 大天使の試験を終えてから2週間が経過した。

 ハティエルはお金は十分に持っていたが、ジオリーズ・インにいた。値段も安く、掃除や洗濯などのサービスも充実していて居心地がよかったからだ。

 今はゆっくりとオフを満喫しており、たまにダンジョンに潜って体を動かすこともあるが、グラムミラクト王国でのグルメを満喫していた。来月にはミュカとワンダラーナ王国に行くことになっている。1年の間は地上の人間として、世界を楽しむつもりだ。

 朝日を浴びながらソファに座り、今日はなにを食べようかと考えていると、部屋の扉がノックされた。

 ミュカだろうかと思い、扉をあけるとそこにはデュナンタとオヴェイルがいた。2人とも人間の姿だった。

 驚きながらも部屋にいれ、ソファに座らせ、自分はテーブルの椅子を移動させて正面に座った。

 オヴェイルは早速、話を始めた。


「あのあとアリム様に呼ばれて、フロアボスをおろされたんだ。それで、お前の話を聞いて、俺も人間にしてもらったんだ」

「へー。でも、魔王のときと比べて全然強そうに見えないね」


 オヴェイルは笑った。


「ああ、力は大天使の試験を受けた300年前に戻してもらったんだよ。今はギルドっていうのがあるんだろう?なら、仲間を集めてもう一回、地下1層からやってみようかなって思ってさ。そのほうが楽しめるだろう?」

「300年前っていうことは、デュナンタが見習い天使の頃に天使だったってこと?」


 オヴェイルは頷いた。


「さっきギルドに行って冒険者の登録をしてきた。魔法は使えるけど、もちろん重戦士。部屋はここの三号室があいているって聞いて、そこにしてもらった。これからよろしくな!」

「私達が冒険してきた時と比べて、随分環境が良くなっているみたいね。ギルドも住まいの手配なんてのもなかったし、グラムミラクト王国自体もかなり発展してる」

「活気もあるよな」

「じゃあ、デュナンタとオヴェイルで一緒にいくの?それとも競争するの?」

「私は冒険者じゃない。地下5層から作り直すために地上の様子を見に来ただけよ。しばらくしたら楽園に帰るんだけど……」


 デュナンタは顔が少しひきつっていた。

 それを見たハティエルは察した。デュナンタは天使……いや、大天使なので、アリムに逆らえないのだと。


「見た目は女神像のまんまだし、アリム様が直接見に来るわけにはいかないからなぁ……」


 オヴェイルは再び笑った。


「そんなことをしたら大騒ぎになるだろう」

「でも、デュナンタも久しぶりに地上を見学できてよかったんじゃない?」

「はあ?久しぶりに地上にきたら、フォーチュンメイトが無くなってるんだけど?私はあれがせめてもの救いだったのに……」

「フォーチュンメイトって?」

「有能すぎる美味しいサンドウィッチ屋よ。私は毎朝あれを食べてダンジョンに行ってたの。あれが無いと朝が始まらないのよ」

「200年前の店ならしょうがないよ」


 それを聞いたデュナンタはうなだれてため息をついた。


「でも大丈夫。有能すぎる店ならヴァーミリオンズがあるから。私はちょうど朝ごはんに行く予定だったから、一緒に行く?」


 デュナンタは顔をハティエルに向けた。


「ホットドッグの店なんだけど、同じパンだし、きっと気に入ると思うよ」

「なぁ、デュナンタ。行ってみようぜ」

「そうね」


 2人が立ち上がると、ハティエルも立ち上がった。

 その時、デュナンタは壁に立てかけてあった剣と盾が目に入った。そして、その隣りにあった大きな斧も。


「ハティエル、それ……」

「うん、私も最近、それ使ってるんだ。かっこいいかなって思って」


 3人は笑った。

 そして、斧の話をしながら楽しそうに部屋を出ていった。

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Angelic Voyage Master.T @mastert

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