第14話:星降る夜の約束

 湯上がりの二人の肌は、ほんのりとピンク色に染まっていた。

 二人は一緒にオレンジジュースを飲んだ後、向日葵の部屋に戻るた。するとそこにはベッドの上に二着のパジャマが丁寧に畳まれて置かれていた。


「小梅ちゃん、これ」


 向日葵は微笑みながら、小梅にパジャマを手渡した。それは淡いピンク色の生地に、小さな花模様が散りばめられた可愛らしいデザインだった。向日葵が着るのは同じデザインで、色だけがラベンダー色のものだった。


「え? これ……」


 小梅は驚いた表情で、手渡されたパジャマを見つめた。


「お揃いだよ~。私が選んだの~」


 向日葵の言葉に、小梅の頬が再び赤く染まる。彼女は戸惑いながらも、嬉しさを隠しきれない様子でパジャマを受け取った。


 二人は背中合わせでパジャマに着替え始めた。シルクのような滑らかな肌触りが、湯上がりの肌に心地よく馴染む。小梅は自分の体に合わせて特別にオーダーメイドされたかのようなフィット感に驚いた。


 着替えを終えた二人は、鏡の前に並んで立った。向日葵の長身と小梅の小柄な体型のコントラストが、お揃いのパジャマによってさらに際立つ。しかし、それは不釣り合いではなく、むしろ絶妙な調和を生み出していた。


「似合ってるね、小梅ちゃん」


 向日葵の優しい言葉に、小梅は照れくさそうに頷いた。


「う、うん……向日葵も、似合ってる」


 二人はベッドに腰かけた。向日葵の大きなベッドは、二人が寝ても余裕がある広さだった。ラベンダーの香りのするシーツが、さらにリラックスした雰囲気を醸し出している。


「じゃあ、寝よっか」


 向日葵が言うと、小梅は少し緊張した様子でベッドに横たわった。向日葵も隣に横たわり、二人は自然と向き合う形になる。


 窓から差し込む月明かりが、二人の顔を優しく照らしていた。小梅は向日葵の大きな瞳に見入りながら、不思議な安心感に包まれるのを感じた。


「私、向日葵と逢えて良かったよ……」


 小梅の言葉は、ささやくように静かだった。しかし、その言葉には深い感情が込められていた。向日葵との出会いが、自分の人生をどれだけ豊かにしてくれたか。それを言葉にするのは難しかったが、この瞬間、小梅はそれを強く実感していた。


「あたしもだよ~、小梅ちゃ~ん」


 向日葵の声も、同じように感情に満ちていた。彼女は優しく小梅を抱き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。


 小梅は向日葵の胸元に顔を埋めた。向日葵の体から伝わる温もりと、やわらかな香りに包まれて、小梅の心は静かな幸福感で満たされていく。


「向日葵といると、なんだか安心するんだ。いつも私のことを見守ってくれて……本当にありがとう」


 小梅の声は少し震えていた。普段は素直になれない気持ちを、この瞬間だけは率直に伝えたいと思った。


「小梅ちゃんこそ、いつも私に元気をくれるんだよ~。小梅ちゃんの頑張る姿を見てると、私も頑張れるの~」


 向日葵は小梅の髪を優しく撫でながら答えた。


 二人は互いの存在に感謝しながら、抱き合ったままの姿勢でいた。やがて、小梅の呼吸が少しずつ深くなっていく。向日葵も、小梅と同じように眠気が押し寄せてくるのを感じた。


「おやすみ、小梅ちゃん」

「うん……おやすみ、向日葵」


 最後の言葉を交わし、二人は同時に目を閉じた。お互いの体温を感じながら、二人はゆっくりと眠りの世界へと誘われていく。


 窓の外では、小さな星が瞬いていた。その光は、まるで二人の絆を祝福しているかのようだった。この夜、小梅と向日葵の心は、これまで以上に近づいていた。そして、まだ言葉にはできないけれど、二人の間に芽生えた特別な感情は、確実に育ちつつあった。

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【学園百合小説】見上げる君と守りたい私 ~小梅と向日葵の揺れる心~ 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi

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