第8話 関係

体育の授業。それは勉強の出来ない和也にとっては学校で数少ない楽しい時間だ。

「今回の体育って何やるんだ?」

和也は、大樹に問いかけた。

「5月6月はサッカーだってよ」

「おーいいやん」

「体育祭もあるし練習しとかないとね」

この学校では体育祭ではバスケやバレー、リレー、そしてサッカーなど色んな種目がある。

体育の授業でグラウンドに来た2人は、パス練習をしていた。

「はよ試合やりたいな」

「サッカーなんてパス出来なかったら試合成り立たないからしょうがないよ笑」

「それもそうか」

そうしてパス練習が終わった2人はベンチで休憩することにした。その瞬間、思いもよらぬ人から声をかけられた。

「あれー?かずちんじゃーん!!」

隣のクラスの中島澪だった。体育はA組とB組で1グループ。C組とD組で1グループとなっており、和也はA組、澪はB組である。

「あっちにさっちーもいるから一緒に練習しようよ!」

「和也、この人は?」

「隣のクラスの子だ。訳あって知り合いでな」

「かずちんの隣のボーイくんも一緒にやろうよー!!」

「いいよ。せっかくならパス回しするか。もう1人の子はどこ?」

「さっちー!!こっち来てー!!」

その声と共に、さっちーこと清宮皐月がこっちに向かってきた。

「あれ?皐月さん?」

大樹は少しばかりびっくりした表情をした。

「こ、こんにちは...皐月です...」

「こんにちは皐月さん。よろしく」

「かずちんもさっちーにちゃんと挨拶しなよ!!さっちー悲しんでるよ?」

「あ、ああ、こんにちは皐月、さん」

「和也くん...こんにちは」

「なんでそんなよそよそしいのさ!!前あんなに仲良さそうに話してたのに!!」

「お、おい」

少しばかり動揺した和也に、大樹問いかけた。

「あれ?和也と皐月さんって仲良いの?なんか接点あったっけ」

「ま、まあ縁あって時々話してたぐらいだけどな?」

和也は皐月と友達だということは一応隠していた。和也は女友達がほとんどいないので、女友達がいざできると大樹に「もしかして彼女?」とか弄られて少しばかりダルいので皐月との関係は何も言っていなかった。

「うっそー!!放課後によく2人きりで仲良くゲームしてるじゃん!!」

「ふーん?そうなの大樹?」

「ただ一緒にゲームしてるだけな?お前らが想像してそうな関係ではないぞ?」

「和也」

「なに?」

「和也に女友達が出来て俺はとっても嬉しいよ!」

「うるさいだまれ」

ニヤニヤした大樹はそう言い、和也はそっぽを向いた。

そうして4人はパス回しをしていた。

「皐月さん上手いね!和也より上手いんじゃない?」

「おい流石にそれは、、、あるかもしれん」

「そうですか...?サッカーは全然やったことがなくてあまりわからないのですが...」

「だとしたら相当センスあるよ皐月さん」

「さっちーはなんでもできるからね!!舐めてもらっちゃ困るよ!!」

(皐月はもしかしてスポーツもできるのか?)

動きがぎこちなくはある皐月だが、和也の少し早めなパスもしっかり受け止めており、さらにそこから大樹に完璧なコントロールのパスを回していた。

「皐月ほんとに上手いな、これなら体育祭女子も勝てるんじゃないか?」

「別にそんなにですよ...?パスができるだけですし...ルールも全然知らないし...」

「いやいや皐月は頭もいいしセンスもいいから少し練習したらそこら辺の女子サッカー部より上手くなるんじゃないか?」

「そ、そうですかね...?」

「うん、絶対そう。」

「ほ、褒めてもなんも無いですよ...?」

「いやいやだって事実だし」

「おーいおふたりさーん?イチャイチャしないでもらえるー?」

「い、いやそんなつもりじゃ、なあ皐月」

「そ、そうですね...」

澪の言葉に少し動揺する2人だったが、褒められた皐月は満更でもなさそうだったのは秘密である。

放課後、和也はいつも通り大樹のサッカーに付き合っていた。

「いやーまさか和也が皐月さんと仲が良かったなんてなー」

「仲が良いって言ってもちょっとゲームするくらいな?」

「和也普段女の子と仲良くなるどころか話そうともしないじゃん。それなのに一緒にゲームする程の仲とか和也にとっては相当仲がいいと思うけど?」

「うっさい」

和也は女子に対して興味を持ったり、仲良くなろうと思うことはほとんどなかった。

「んでどうなの?もしかして皐月さんのこと好きだったり?」

「ちげぇよ、普通にゲーム友達だって」

「ふーん?ところでいつ仲良くなったん?そんな素振り見せてる所一度も見たことないけど」

「放課後たまたま教室に行ったら皐月がゲームしてたんて、それで見てみたらめっちゃ上手かったから話しかけて対戦させてもらったんだ。それでたまに一緒にゲームするようになったってだけだよ。他意はない」

「なるほどねーまあ和也に仲良い女子ができるのは俺も嬉しいし、もしなんかあったら俺も色々協力するからさ!」

「何に協力すんだよ」

「和也の恋の病のお悩み相談?」

「だまれ」

そんな会話を繰り広げた2人はサッカーの練習を終え、和也はいつも通りとある所に向かった。

「お、いたいた」

「こんにちは...和也くん...」

やはり教室にいた皐月、和也は皐月の隣の席に座った。

「いやー今日はなんかごめんなうちの大樹が迷惑かけちゃって」

「いえいえ迷惑なんて...割と楽しかったですし...大丈夫ですよ...?」

「それなら良かった!それにしても皐月サッカーも上手かったな、なんかスポーツやってたのか?」

「いえ...スポーツはあまり...小学生の頃にバドミントンを少しやってたぐらいですね...」

「そうなんだ!皐月がスポーツも得意とは意外だったな」

「そうですかね...?」

「あまりスポーツしそうな感じじゃないし、ちょっとびっくりしたよ」

皐月の体型は見た感じとても細く、スポーツなどをやっていそうな見た目ではなかった。なんならサッカーボールが思いっきり当たったら体が折れてしまうんじゃないかという程だった。

「それにしても皐月って結構細いよな。なんか体型に気を遣ったりしてるのか?」

「いえ...特には...1日2食ですし...あまり食べる方ではないので...」

「そうなのか?あまり食べなさすぎも良くないぞ?」

「分かってはいるんですけど...ゲームしてたらどうしても食べるの忘れちゃって...夜ご飯食べる前に寝ちゃったりしちゃうんですよね...」

「そうなのか、てかまた敬語に戻ってるけどやっぱり慣れないか?」

「私結構誰に対しても敬語なので...全然慣れないですね...」

「まあ素でその喋り方ならいいか、他の友達にはタメ口で俺にだけ敬語ならちょっと嫌だけど、、、」

「澪ちゃんと2人でいる時はタメ口ですね...幼稚園の頃からの付き合いなので...全部打ち解けてる相手ならタメ口でも行けるかもですね...」

「そうか、まあまだ俺達あって1ヶ月だしな、まだまだ全然知らないことばっかだし、まあ関わっていくうちにどんどん慣れてこ」

「はい...頑張ります...」

「ところで今日はなんのゲームする?まああと1時間もないけど」

今日は大樹とのサッカーが少し長引いてしまった為教室に来るのが少し遅れてしまったのだ。

「それなら格闘ゲームはどうですか...?1試合の時間短いし...何回も試合出来ると思うんですけど...」

「いいね!じゃあ格闘ゲームしよ!」

そして2人はゲームに集中し始めた。

「やっぱり皐月は上手いな、、、いくらやっても勝てる気しないわ。どうやったらこんな上手くなれるんだ?」

「うーん...相手の癖を見抜くこと...ですかね...」

「なるほどね!例えば俺ってどんな癖があるんだ?」

「強技を出した後にジャンプしたりするとこですかね...そこを狙って攻撃を出したりしてます...」

「なるほど?よし!いいこと聞いた!もっかいやろ!」

(これでどんどん克服して対皐月キラーになったら1回ぐらい勝てるんじゃないか?」

そう思った和也だったが、現実はそう甘くなくこの後の試合全てでボロ負けしゲームも現実のライフもすり減らされることとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

陽キャの僕はクラスのゲーム好きの女の子が気になる ちさっち @chisacch0222

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ