ヒーロー、厄介なファンに陥落する







 それから、


 結局レオンに手伝ってもらう訳もなく、ブルーは自分の力だけでアッシュを倒せるようにと戦い続けていた。そんなブルーを先回りしたり追いかけ回したりと、レオンも今までと変わらなかった。


 フレイムが戦うのは相変わらずブラックナイトが現れた時だけだったが、それもまだブルーの力が足りないからだろう。いつかフレイムに認められ、ブラックナイトと戦える時が来ればいいとさえ思っていた。


 黒川甲斐とはたまに会ってフレイムグッズを買うことがある。いつも眼光の鋭い友人が迎えに来るのが不思議ではあったが、その話を甲斐にすると「青さんを迎えに来る人も俺の事めっちゃ睨んできますよ……」と遠い目をされた。





「で、結局付き合うことにしたのかよ」

「ん」

「……まあ、良かったな」


 相談に乗ってもらったこともあって灰田に報告をしているのだが、妙に元気がないように見える。


「灰田元気ないな」

「あー……ちょっと、変なことに巻き込まれたから疲れただけだ」


 灰田は面倒くさがりのくせにお人好しだからすぐ面倒事に巻き込まれるのだ。自分も巻き込む側であることを棚に上げて青はそう思った。


「とりあえずお前の彼ピ独占欲強いから、あんま近づかないでもらえる?」

「彼ピ言うな」


 気味の悪い言い方はやめさせたが、独占欲が強いという部分は否定できない。何故ならこうして誰かと話したりしているといつの間にかレオンがやって来るのだ。

 もしかすると宇宙人にはそういう、探知能力みたいなものが備わっているのかもしれない。


「ほら、迎え」

「ああ。じゃあまたな――」


 別にレオンを優先するわけではなく、これ以上灰田と話すことも無かったからだ。待たせ続けるのも何となく落ち着かない。


「青さん!」


 嬉しそうに駆け寄ってくるレオンだが、毎日会っているし今朝だって同じベッドから起きてきたくらいだ。

 結局付き合うようになってから毎日一緒にいるし、毎日……している。今の所変な生き物や力を使っては来ないが、相手は宇宙人なので油断出来ない。

 だがごく普通のセックスでエネルギーが得られるなら、別にレオンの見た目だったらいくらでも女の子を捕まえられるのに……などと考えていたら、腹が立ってきた。


「今日はしないから」

「そ、そんな……」


 絶望という表現が似合う顔をするものだから、おかしくなってきた。相手に困らなそうなのに、青が断ったらもう他は無いのだ。理解していてそれでも試さずにはいられない。


「……お前本当に俺が好きなんだな」

「はい」


 ヒーローがファンに手を出すってやっぱり良くない気がする。でも手を出されてるのは青だし、相手は宇宙人だから、いいのか?






 こうして水の戦士ブルーは厄介なファンに陥落したのだった。

 

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【BL】憧れていたヒーローになったけど熱烈なファンに猛アタックされる俺の話 多崎リクト @r_tazaki

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