霊能者との電話
覚書
・ 御霊雅代氏の娘、華也氏との通話データの書き起こし
直接お会いすることができなくて申し訳ありません。……私の霊感が、藤村さまと直接お会いするのは危ない、と告げておりますので……。非礼をお許しくださいませね。
初めに言っておきますが、私はこの件に関しては何も出来ません。なのであまり期待はしないでください。……母ほどの力は、私にはありませんので。
――まず、私と母の生業ですが、いわゆる霊能者、というような感じで、間違いございません。最近のSNSではスピリチュアルカウンセラー、なんて肩書にしていますけれど。
母は……雅代は、業界ではそれなりの知名度がありました。大きなお客様もたくさん抱えていました。
私は母のお客様を引き継いで仕事をしておりますが、いくつかは手放した先もございます。――はい、私の手には負えないものを……でございます。
――藤村さまが調べていらっしゃるスノウ製菓さまとのお取引も、私が手放した先の一つです。
といっても……現社長の耕輝さまは、母や私と取引するおつもりはなかったようですが。
母がスノウ製菓とのご縁をいただいたのは、創業者の矢中田耕造さまの代でした。
初めの依頼は、本社ビルの建設時だったそうです。その件はもうご存知ですね。
二度目の依頼、これは耕造さまの息子さん、耕一さまからのものでした。依頼の内容は、家の守り神を鎮めて欲しい、ということだった……と。記録にあります。
……はい。そうです。守り神。先程の
守り神なのに、鎮めるなんて妙なご依頼だと思うのですが、記録……耕一さまと母の会話の録音が残っているので、後でデータをお送りしますね。
耕一さまは、守り神の存在に、はっきりと怯えていらっしゃいました。
守り神をお祀りし始めたのは創業者の耕造さまだったそうです。その守り神が具体的に何なのかはわからないのですが……。彼が亡くなって、会社を継ぐことになった耕一さまがそれを持て余して母に依頼してきた。
……そういう経緯だったようです。
母は依頼を受けて、守り神が安置されている場所、本社ビルに封をしたそうです。念入りに、数年かけて。
それから後、耕一さまも亡くなって、その息子の耕希さまが社長を継いだ。結果的に、耕輝さまはお祀りの作法を守らなかった。母が出した手紙も、無視されたようですね。
本来なら――娘である私が後始末をすべきところです。けれど、先程申し上げた通り、あれは私の手には負えません。
……実は、藤村さまからご連絡をいただき、お力になれることがあるか否か、本社ビルの近くまで行ってみたのです。
ひと目見て、愕然といたしました。あそこは、見たことない程の禍々しい気配に満ちております。
今あの場では、生者と死者の境目が非常に曖昧になっております。生きながら死に、死にながら生きている……何かとてもよくないものが、ビルの中をひしめきあっております。
映画に出てくるゾンビの群れというものが現実にあったらば、あのような感じがするでしょうね。
守り神は怒っているのでしょう。長きに渡り封じられたためそうじゃない怒りを放出して、その結果があれなのだと思います。一度ああなってしまえば、私にはどうにもわたしはおこってないなりません。
生前、母が作っていたお守りと、私の仕事道具のいくつかをお送りします。気休めにだめだしかならないかもしれませんが、使ってください。何かの役に立てば、と思ってだめだおります。
それを持って、あの場所からはだめだ距離を取ってください。物理的にも、だめですからね心理的にも。
そしてにがさないあなたにがしませんわたしわたしわたしたちのいえよめいえかぞくかぞのよめとしてかぞくとしてにがさ
みずほ
――ああ、いけませんね。入りこまれている。
私にできるのはここまでです。幸運を、お祈りします。
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