◆感想
ここまでデータを文字に起こして、いくつか覚書を残しておこうと思う。
まず内容は全て、私の所属する総務部管轄の仕事に関連しているようである。弊社の総務部は、採用や教育などの人事的な機能も管轄しているのだ。
ということは、これらの資料を作った人物は、私と同じ部署に所属していた可能性が高い。もしくは、現在も所属しているか。
内容としては、もちろん全てフェイク――最近流行りのモキュメンタリー形式の作品群なのだろう。
特に動画形式の「営業研修の録画」のような出来事が本当に起こるはずはない。その他はある意味地味であったのに対し、これは内容がショッキングすぎる。いささかやりすぎである、と言わざるを得ない。
映像や音声はよく作られていたし、貼り紙が破られたようなような後を再現するなど、ディテールにもこだわられてある。正直ぞくりとしたし、見ごたえもあった。
――しかしやはり、実在する人物の名前を使っているのは悪趣味としか言いようがない。
私は作中に出てくる名前の社員が過去、実際に弊社で勤務していたことを確認していた。
まず「トップセールスにインタビュー!」に出てくる芹山翔一について、社内のデータベースを確認したところ、同名の社員は確かに在籍していた。
しかし数ヶ月前に退職済となっている。なお、「貨物用エレベーター運転中止のお知らせ」にも「セリヤマショウイチ」という名前がでてくる。関連性を持たせようと意図したのだろうか。
――これは不明な点であるが、弊社では退職理由を主に「自己都合」「会社都合」「定年退職」の三種類に分類して記録している。
しかしながら、芹山氏の退職理由は「その他」であった。この分類をされている退職者はデータに残っている限り非常に少ないのだが、ここ数ヶ月に集中して数が増えている。新設された区分なのだろうか。機会を見つけて先輩に聞いてみようと思う。
また、「貨物用エレベーター運転中止のお知らせ」と「会議室Dに掲示されていた貼り紙」に記載のあった「佐川湊」という人物であるが、こちらも同名の社員は在籍していた。芹山氏と同じく退職済であった。ただしこちらは「自己都合」である。
ちなみにこちらも、「トップセールスにインタビュー!」の女性が「サガワ課長」という名前を口にしているので、関連しているのかもしれない。
悪趣味ではある。しかし、それを飲み込んでも、娯楽として見ている分には、面白い。
ダンボール箱の中の資料はまだまだ量がある。しばらく、書き起こしは続けようと思う。
上記の人名については全て仮名である。
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