第8話 新たな季節へ

夏休みが終わり、真由美と亮は新学期を迎えた。秋の風が涼しくなり、学校には少し早い秋の気配が漂っていた。二人は以前のように授業や部活に忙しくなり、秘密基地で過ごす時間も限られていたが、夏の間に築かれた絆は確かに彼らをつなぎ続けていた。


ある放課後、真由美と亮は久しぶりに秘密基地に向かった。学校のことで忙しかったこともあり、二人がここに来るのは数週間ぶりだった。道中、二人はいつも通りの会話をしながら、夏が終わっても変わらない自然の美しさを楽しんでいた。


「久しぶりだね、ここに来るの」真由美が言った。


「うん、懐かしい感じがするな。夏休みがすごく昔のことみたいだ」亮が笑って答えた。


秘密基地に到着すると、夏の名残を感じさせる風景が広がっていた。緑が少しずつ色づき始め、森の中は静かで穏やかな雰囲気に包まれていた。二人はベンチに腰掛け、ゆっくりとした時間を楽しんでいた。


「亮君、この前の話だけど…」真由美は亮に向き直り、少し真剣な表情で話し始めた。


亮は彼女の言葉に耳を傾けた。「うん、何?」


「私、あれから色々と考えたんだ。自分の気持ちについて、もっとちゃんと理解しようと」


真由美のその言葉に、亮は静かに頷いた。彼もまた、夏休みが終わってから彼女のことを何度も考えていた。自分の気持ちを告白したあの日から、真由美がどんな結論を出すのか、少しだけ不安だったのも事実だった。


「それで…どうだった?」亮は慎重に尋ねた。


真由美は一瞬、目を閉じて深呼吸をした。そして、ゆっくりと口を開いた。「亮君、私はやっぱり君のことが好きだって気づいたよ」


その言葉を聞いた亮は、少し驚いたように目を見開いた。「本当?」


「うん。君と一緒にいると、すごく安心するし、楽しい。それって、ただの友達以上の感情なんだって、やっと気づいたの」


真由美の言葉は、彼女の心の底から湧き出たものだった。彼女はこの数週間、亮への感情が単なる友情ではなく、もっと深いものだと理解するための時間を過ごしてきた。


「だから、もし君がまだ私を待ってくれているなら、私も君と一緒に歩んでいきたい」


亮の顔に広がった笑顔は、真由美の心を温かく包み込んだ。彼は何も言わずに真由美の手を取り、優しく握りしめた。


「もちろん、待ってたよ。これからもずっと一緒にいよう」


その瞬間、真由美の心からすべての迷いが消え去った。亮の手の温もりが、自分が正しい決断をしたことを確信させてくれた。二人はもう一度、夕暮れの空を見上げた。茜色に染まる空が、これから始まる二人の新たな物語を祝福しているかのようだった。


「これからの季節も、いっぱい思い出を作ろうね」真由美は笑顔で言った。


「うん、これからは秋も冬も、ずっと一緒に」亮もまた、心からの笑顔で答えた。


夕日が沈み、空が深い青に変わる頃、二人は手を繋いで秘密基地を後にした。その道は、これからも二人が一緒に歩んでいく未来へと続いている。


---


こうして、真由美と亮の夏の物語は幕を閉じたが、二人の青春の日々はまだ始まったばかりだった。季節が移り変わる中で、彼らは互いに支え合いながら、次のステージへと進んでいく。新しい季節が訪れるたびに、二人の絆はさらに深まり、そしてまた新たな思い出が生まれていくだろう。


真由美と亮は、これからもずっと、共に歩んでいく。その道は、時には曲がりくねっているかもしれないが、二人ならば乗り越えていけるはずだ。新たな季節へと進む二人の未来は、これからも希望に満ちている。

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波打ち際で紡ぐ夏 灯月冬弥 @touya_tougetu

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